【次期カングーと共同開発】メルセデス・ベンツ・シタン 試作車へ試乗 Tクラスに展開も 前編
公開 : 2021.04.02 08:25
メルセデス・ベンツが開発を進める小型商用車のシタン。家族用のミニバンとして、Tクラスへ展開する計画もあります。開発途中の試作車に、英国編集部が試乗しました。
次期ルノー・カングーと共同開発
メルセデス・ベンツ・シタンは、欧州で展開されている小型の四角い商用車。英国でも需要は高い。
フォルクスワーゲン・キャディやシトロエン・ベルランゴ、プジョー・パートナーなどの実力派に対抗するため、現行型は2012年に発売された。ひと回り大きいメルセデス・ベンツ・ヴィートに習ったシートレイアウトを採用する。
メルセデス・ベンツとルノーとの技術提携によって生まれたモデルで、ベースはルノーの人気者、2代目カングー。ホイールベースは3種類があり、日産NV200との関係性も濃かった。
ところが、メルセデス・ベンツでありながら欧州の安全評価で5つ星を獲得できず、順調なスタートが切れなかった。9年間のモデルライフでは値引きも積極的に行われていたようだが、期待ほどの売れ行きには至っていない。
でも2代目シタンなら心配はいらない、とメルセデス・ベンツは自信を見せる。次期型もルノーとの連携で設計が進められ、メカニズムは間もなく誕生する3代目カングーと共有する。次期シタンのプロジェクトリーダー、ダーク・ヒップに話を聞いた。
「重要なポイントは、既存の設計からモデルを派生するのではなく、メルセデス・ベンツとして共同で開発を進めているということです。成功に欠かせないスタイリングだけでなく、我々が求める動的性能の質や機能が得られますからね」
レジャー用ミニバンとしてTクラスも
新しいアプローチを反映するように、次期シタンでは2モデルが展開される。商用車は従来どおりシタンと呼ばれるが、より装備を充実させた乗用前提のレジャー用ミニバンも登場する予定。こちらには、Tクラスという名前が与えられる。
今回AUTOCARでは、ドイツ南西部のインメンディンゲンの開発研究施設で、新しいシタンのプロトタイプを試乗する機会が得られた。2年間の開発プロジェクトは、終わりに近づいているということだ。
これまでにシミュレーションを終え、既に氷点下25度から酷暑の40度まで、欧州各地で500を超えるテストを実施済みだという。開発途中ながら、ひと足先に味見させてもらえる程度までは仕上がっている。
小型の商用車として、最大限の車内空間とシンプルな機能、日常的な実用性を与えるため、シタンのプロポーションは背の高い2ボックス。商用車市場のニーズを反映したものといえる。
ボディのデザインは偽装が施されていて詳しく観察できなかったが、メルセデス・ベンツによれば初代のシタンより、ルノー・カングーとの差別化は強められているという。だが、リア・サイドウインドウの処理など、共通性も残るようではある。
次期シタンでは、ホイールベースは2種類が用意される。従来にあったショート・ホイールベース版は、需要が少なくラインナップから外れるそうだ。