【なぜターボなし?】新型トヨタGR 86/スバルBRZ開発思想 スープラ/WRXどう関係?
公開 : 2021.04.06 05:45 更新 : 2021.10.27 21:44
新型トヨタGR 86とBRZはターボを選択せず。2モデルの「正しい姿」を追求した開発者の思想を探ります。
期待どおりのパワーアップ しかし……
「86を発売したあと、あちこちで『86のターボは出ないのか? 』と尋ねられましてね。日本でも海外でも本当にみんなに質問されるんですよ。もう数百回どころじゃないほどきかれたんじゃないかな」
初代86のチーフエンジニアを勤め、その後90スープラの開発もまとめたトヨタの多田哲哉氏がスープラのデビュー時のインタビューでそう語っていたのをよく覚えている。
専用プラットフォームを持つ86やBRZは操縦性に高い評価を得ている一方で、パワー不足という声も少なくない。だから新型ではパワーアップが望まれていたのだ。
初のフルモデルチェンジを経て新型となった86とBRZの最高出力は235ps、最大トルクは25.5kg-m。それは先代の最終モデル(MT)に対して28ps/3.9kg-mのアップだから、多くのユーザーの希望どおりに出力向上はしっかりはかられている。
気になるのは、パワーアップを実現する手法として排気量アップを選んだことである。ターボではないのだ。
ドリフトにはターボの方が好都合
新型も水平対向の4気筒直噴エンジンを受け継ぎつつ、エンジンのボアを86.0mmから94.0mmへ拡大。86.0mmのストロークは変えることなく排気量を1998ccから2387ccへ増やしている。自然吸気ならではのリニアかつ高回転で盛り上がるフィーリングと高出力化を両立したというわけだ。
しかし、多田氏のコメントからもわかるように、多くのユーザーがターボを求めていることはスバルやトヨタも気がついているだろう。
そこには86の世界観の1つになっているドリフトとも大きな関連がある。
ドリフトでも、ブレーキングや慣性でテールを流すような超限界域のドリフトならターボでも自然吸気も関係ない。
しかし、ドリフトを楽しむ多くの人がきっかけとする、パワーをかけてテールスライドからドリフトに持ち込む方法だと、排気量2.4L程度の自然吸気エンジンよりも低回転域からしっかりトルクを出すターボのほうがマッチングはいい。そのほうがパワーをきっかけに使うだけでなく、ドリフトの維持だってしやすい。
排気量アップによるパワーアップよりも、ターボによるトルクアップのほうが気軽にドリフトして遊ぶには都合がいいのだ。
さらに、チューニングとの相性もある。自然吸気エンジンの気軽なパワーアップは難しいが、ターボであればブースト圧の設定を変えるだけで手軽にパワーアップが可能。そういった面からも、ターボを望む声が少なくなかった。
しかしながらターボは姿を現さず、86やBRZは新型になっても自然吸気を選んだのである。
果たしてその理由はどこにあるのだろうか。