【詳細データテスト】フォルクスワーゲンID.3 広いが質感不足の室内 過不足ない走り 総じて満足
公開 : 2021.04.11 20:25 更新 : 2021.05.01 16:07
フォルクスワーゲン初のEV専用モデル、ID.3は、質感は不満が残り、走りに際立ったところはありません。しかし、室内の広さや航続距離は十分で、快適性も合格点。新開発EVが普通にいいって、じつはすごいことです。
もくじ
ーはじめに
ー意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
ー内装 ★★★★★★★★☆☆
ー走り
ー使い勝手 ★★★★★★★☆☆☆
ー操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆
ー快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆
ー購入と維持 ★★★★★★★★☆☆
ースペック
ー結論 ★★★★★★★★☆☆
はじめに
1938年、1974年、そして2020年。フォルクスワーゲンの歴史を振り返ったとき、これらは特別な意味合いを持つ年号だ。といえば、今回のテスト物件が、この世界最大規模の自動車メーカーにとっていかに重要なのか、伝わるのではないだろうか。
ひとびとが想像した以上に早く変革しようとしている自動車業界における、彼らの大望にとって重要、といってもいい。ビートルからゴルフへ、そこからID.3へ。フォルクスワーゲンの過去から現在がうまく切り替えできたように、未来へも移行したいというわけだ。
少なくとも、そういうプランを立てているのはたしかだ。ソフトウェアの欠陥で発売は遅延したが、それほど深刻な問題ではない。2020年12月、欧州でもっとも売れた新車はゴルフで、2万9949台だったが、それに続くのが2万6987台のID.3だったのだ。
付け加えるなら、第3位はテスラ・モデル3だった。このことから、自動車界の勢力図がどれほど急速に変化しているのか、よくわかるだろう。
フォルクスワーゲンとテスラの違いを挙げるならば、テスラがすでに4車種をラインナップし、さらに奇抜なサイバートラックをも発売しようとしているのに対して、フォルクスワーゲンにとってID.3が、これからはじまる業界きっての電動車攻勢における皮切りにすぎないということだ。
フォルクスワーゲンは今後、2028年までに70車種のフルEVを新規投入する計画を掲げている。そして、すでにその実現に向け着々と準備を進めており、2030年までに35%の達成を目指していた欧州での新車販売に占めるEV比率を、倍の70%に引き上げるとも公言している。
すでに発売済みのID.3とクロスオーバーSUVのID.4に加え、年内にはクーペ風SUVのID.5も市販化される予定だ。さらに、コンセプトカーのID.バズやID.ヴィジョンで示したように、このID.を冠するサブブランドには、ミニバスやサルーン、スポーツクーペなどさまざまなセグメントに及ぶ多様性が見込まれている。
もちろん、こうした動きへとフォルクスワーゲンを駆り立てた要因に、例のディーゼル不正問題があったことは否定できない。経営が傾くほどの打撃を受け、商売を成功裏に存続させる唯一の方法かもしれないのがID.ブランドの成長だ。贖罪の道、といってもいいかもしれない。
このイニシャルは「インテリジェントなデザイン、アイデンティティ、未来を見据えたテクノロジー」を表すというのが公式見解だ。じつに聞こえのいいマーケティング的説明だが、そうした色眼鏡は外して、ID.3の実力を客観的に探ってみたい。