【長寿の秘訣は?】フルモデルチェンジせずとも堅調に売れる長寿モデルたち

公開 : 2021.04.20 05:45  更新 : 2021.10.22 10:12

フルモデルチェンジせずとも長期にわたり人気のモデルがあります。長寿の秘訣は唯一無二の特徴にあるといえます。

発売から10年以上 堅調に売れる車種も

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

クルマの売れ行きは、発売されて時間が経過すると、次第に下がっていく。

そして一般的には、発売から5~7年後にフルモデルチェンジを受ける。内外装の質、居住性、積載性、走行性能、乗り心地、安全装備など、さまざまな機能やデザインを向上させて売れ行きを回復させるわけだ。

三菱デリカD:5
三菱デリカD:5

ところが最近は、フルモデルチェンジをおこなう周期の長い車種も増えた。メーカーとしては、環境性能、自動運転、通信機能などに関する開発投資が増加して、以前に比べると車両本体の開発に費やせる予算が相対的に減っているためだ。

また今の日本車の販売状況をみると、世界生産台数の85%以上を海外で売るメーカーが多い。

2020年のデータによると、国内の販売比率は、三菱が8%、日産スバルは12%、トヨタホンダでも14%と少ない。国内へ投入される新型車はさらに減り、発売から10年以上を経過する車種も増えた。

設計が古くなると売れ行きも下がるが、すべての車種が販売を低迷させたわけではない。設計が古くなっても、堅調に売れ続ける車種はある。その理由を探ってみたい。

発売から14年 残価率高いデリカD:5

三菱デリカD:5

発売から長い時間が経過しても売れ行きを下げない車種として、まず三菱デリカD:5が挙げられる。2007年の登場だから、既に14年を経過するが、2020年から2021年には1か月平均で1000台以上を登録した。

好調に売れる秘訣は複数あるが、筆頭に挙げられるのは、ほかのミニバンとは違う明確な特徴を備えることだ。

三菱デリカD:5
三菱デリカD:5

外観はミニバンスタイルのSUVという印象で、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)にも185mmの余裕があるから、悪路のデコボコを乗り越えやすい。4WDにはロックモードが備わり、ミニバンでは悪路走破力が最も優れている。

しかも、デリカD:5は、定期的に改良をおこなう。

2013年にはクリーンディーゼルターボを搭載して、ミニバンのディーゼルを復活させた。ディーゼルは実用回転域の駆動力が高く、SUV風のデリカD:5にはピッタリのエンジンだ。しかもミニバンのディーゼルは、デリカD:5とトヨタ・グランエースのみになる。

2019年にはフルモデルチェンジに匹敵する改良もおこない、フロントマスクを今の三菱車に共通する「ダイナミックシールド」に変更した。

インパネなど内装の質感、ディーゼルエンジン、走行安定性、乗り心地なども改善している。衝突被害軽減ブレーキと運転支援機能も加えた。

そのためにデリカD:5の登録台数は、今でも三菱の小型/普通車(軽自動車を除く)では最も多い。

人気の理由を販売店に尋ねると以下のように返答された。

「デリカD:5には、SUV風のミニバンという、ほかの車種とは違う特徴がある。そのためにデリカD:5だけを何台も乗り替えるお客さまが多い。ジャスパーのような特別仕様車も定期的に設定され、乗り替えもしやすい」

「そしてデリカD:5は高値で売却できるから、お客さまに従来型を下取りに出して新型車を買いませんか、と購入の提案をしやすい」

デリカD:5中古車市場での人気も高く、残価設定ローンの残価率は、3年後で新車時の55%だ。

ほかのミニバンは基本設計が新しくても45%前後だから、デリカD:5であれば、購入から数年後に売却する時の金額も高い。

そのために従来型から新車のデリカD:5に乗り替えるユーザーも増えて、好調な売れ行きが保たれている。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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