【地球1周を走ったミニ】BMCミニ ジャックとジルの大冒険 アフリカ〜南米 前編
公開 : 2021.05.08 07:05
壮大なチャリティー・チャレンジを走破した、2台のカラフルなBMCミニ。丁寧なレストアを遂げた姿とともに、世界1周の大冒険を振り返ります。
もくじ
ーポリオウイルスのチャリティ・チャレンジ
ーショックアブソーバーは6回も交換
ー新しい1275ccユニットへ置き換え
ー日の出前の準備で15kmしか走れない日も
ー標高4200mからの下り坂でブレーキ故障
ポリオウイルスのチャリティ・チャレンジ
新型コロナウイルスの流行は収束を見せないが、今から40年前、ポリオウイルス研究の資金調達と認知度を高めるため、2台のオリジナル・ミニが大冒険を成し遂げている。
冒険家のトニー・クラークがチャリティ・チャレンジの実施を呼びかけ、19際のメカニック、ティム・フェリスと一緒に9万6000kmの自動車旅行を計画。ブリティッシュ・レイランドが提供したミニで地球を1周したのだ。
2台は英国旗の赤、青、白の3色に塗装。古くからの童謡ちなんだ「ジャック」と「ジル」というニックネームが付けられた。
英国BBCのカメラマンも同行し、冒険を取材。英国王室のアン王女や、7歳でポリオに感染したロック歌手のイアン・デューリーも後援し、ポリオ撲滅キャンペーンの成功を後押しした。
当時、クラークは英国西部のコーンウォール在住で、地元のディーラーがミニを手配。そのガレージで勤務していたティム・フェリスにクラークは惹かれ、2人目のドライバーとしてチームへ招き入れた。
1980年、2台のミニはコーンウォールからロンドンのBBCスタジオへ自走。正式なスタートを切る。
最初の目的地はフランス・パリ。同行する1人目のカメラマン、プレヴィン・タークルと合流した。ミニはフランスを南下し、マルセイユへ。アルジェリアとモロッコ間の戦争で荒廃した地域を避けるため、地中海を渡りアルジェリアへ運ばれた。
チームを待ち受けるのは、過酷なサハラ砂漠。砂漠を単独で横断することは違法とみなされており、護衛も兼ねた車列に加わった。
ショックアブソーバーは6回も交換
当時の様子を、メカニックを務めたフェリスが振り返る。「自分はまだ未熟で、何へ取り組んでいるのか理解していませんでした。ミニは適したクルマとはいえず、頻繁に砂にハマりました。50回以上はスタックしています」
「苛立ちをつのらせたフランス人の車列は、最終的にわたしたちを置き去りに。食料や飲水は、幸運にも自分たちで手配できました」
「ドイツ人の宣教師グループが軍用だった四輪駆動車に乗って移動していて、アルジェリアの隣国、ニジェールまで牽引を頼みました。旅の資金の大部分と引き換えに」
サハラ砂漠は「ジャック」と「ジル」を疲弊させた。粒子の細かい砂は小さな隙間へ入り込み、ベアリングやブレーキにダメージを与えた。ショックアブソーバーは6回も交換したという。
南下を続け、ナイジェリアのラゴスへ6月5日に到着。英国からスペアパーツの到着を待ち、スケジュールは遅れた。
ラゴスでは豪雨に見舞われ道路が氾濫。トラックも通行できないほどの被害になった。仕方なくミニを飛行機に載せ、ケニアのナイロビへ移動。到着後はクルマや荷物が政府に差し押さえられ、手元に戻るまで1週間を要した。
ケニアからタンザニア経由でマラウイへ移動する道は、危険が多い。クラークは、内地のセレンゲティ国立公園を通るルートを選んだ。
予定外のサファリ・コースだったが、象やハイエナ、ライオンなどとの遭遇には喜んだようだ。水辺で休憩しているとワニが近くに迫っていて、自然へ近づきすぎた恐怖を感じたという。