【なぜ?】普通車販売台数上位がトヨタばかりの背景 各社の売り方どう影響?

公開 : 2021.05.01 05:45  更新 : 2021.10.22 10:12

トヨタが普通車販売上位を独占する背景には、トヨタの全車販売体制のみならず、他社の売り方の変化があるといえます。

単体では普通車販売1位はルーミー

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

2021年1~3月の新車の売れ行きをみると、小型/普通車の販売上位にはトヨタ車がズラリと並ぶ。

2021年1~3月に共通するのは、1位:ヤリス、2位:ルーミー、3位:アルファードになることだ。このトップ3車は定番だ。

トヨタ・ルーミー
トヨタ・ルーミー    トヨタ

そして4位/5位は、2021年1月はハリアー/カローラ、2月はカローラ/ハリアー、3月はノート(日産)/カローラであった。3月は4位にノートが入ったが、1/2月は4位と5位もトヨタ車が占めた。

さらに小型/普通車のトップ10車を見ると、1月と2月にはトヨタ車が8車、3月にも7車が入っている。前述の車種のほか、ライズ、ハリアー、ヴォクシーシエンタといったトヨタ車の販売も好調だ。

小型/普通車の登録台数を見る時は、ヤリスとカローラに注意したい。

日本自動車販売協会連合会の集計では、ヤリスの登録台数には、コンパクトカーのヤリスに加えてSUVのヤリス・クロス、スポーツモデルのGRヤリスも含まれるからだ。いわばヤリス・シリーズの合計台数になる。

カローラについても、カローラ・セダン、ワゴンのツーリング、ハッチバックのスポーツ、従来型になる5ナンバー車のアクシオとフィールダーも加わる。

ヤリスに話を戻すと、SUVのヤリス・クロスは一般的に考えて別のクルマだ。そこで直近の2021年3月について、ボディタイプ別に集計すると、コンパクトカーのヤリスは1万4330台、SUVのヤリスクロスは1万2890台が登録された。

そうなると3月の登録台数1位は、ルーミーの1万6504台だ。2位はヤリスの1万4330台、3位はアルファードの1万3986台、4位はノートの1万3352台、5位はヤリス・クロスは1万2890台と続く。

小型/普通車の1位がルーミーに入れ替わるのは意外だが、トヨタ車が上位を占めることに変わりはない。

3月に1万台以上を登録した車種のうち、トヨタ車以外は日産ノートだけだ。なぜ販売の上位にはトヨタ車ばかり並ぶのか。

トヨタ全車体制になり一部に人気が集中

販売上位にトヨタ車が並ぶ理由として、トヨタの販売体制の変更が挙げられる。

2020年5月から、全国のトヨタの販売店でトヨタの全車を買えるようになり、販売系列による取り扱い車種の区分が撤廃された。

上:トヨタ・アルファード/下:トヨタ・ヴェルファイア
上:トヨタ・アルファード/下:トヨタ・ヴェルファイア    トヨタ

これを受けてルーミーは、マイナーチェンジで姉妹車のタンクを廃止した。そのために需要がルーミーに集まり、2021年3月の登録台数は、2020年の1.7倍に達した。

アルファードの場合は、今でも姉妹車のヴェルファイアが用意される。それでも登録台数はアルファードの圧勝で、2021年3月の登録台数は、前年の1.8倍となった。

ヴェルファイアは大幅に下がり、基本的に同じクルマなに、3月の登録台数はアルファードのわずか8%だ。アルファードとヴェルファイアは基本的に同じクルマだが、フロントマスクの違いと販売体制の変更で、販売格差が拡大した。

このほかヤリスも、2020年2月の発売時点ではネッツ店のみの取り扱いだったが、5月以降は全店が販売するようになって登録台数を伸ばした。

以上のように全店が全車を扱うと、人気車と不人気車の差が激しくなる。

その結果、人気車は全店で好調に売れて、小型/普通車登録台数ランキングの上位に並ぶ。トヨタの販売店舗数は全国に約4600か所を展開しており、日産やホンダの2倍以上に達することも、好調に売れた理由だ。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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