【別格の存在感】アウディRS4アバント試乗 RSモデルのメートル原器

公開 : 2021.05.15 11:45  更新 : 2021.10.11 14:49

アウディRS4アバント。ステーションワゴンとしての実用性も兼ね備えたRSの源流ともいえるモデルに試乗しました。

「RSモデルのメートル原器」的な1台

text:Toshimi Takehana(竹花寿実)
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

1994年に登場した80アバント(B4)をベースにハイパフォーマンスワゴンに仕立てられたRS2アバントにルーツを持つRSモデルは、アウディのスポーティなイメージと先進性の象徴として、四半世紀以上もラインナップの最上位に位置づけられてきた。

RS2アバントは元々、かつてアウディの開発部長として4WDシステムの「クワトロ」や5気筒ターボエンジン、アルミニウム製ボディなどの開発を指揮し、アウディがプレミアム・ブランドへ躍進する足場を築いたフェルディナント・ピエヒが、フォルクスワーゲン会長になった直後に、当時業績不振に陥っていたアウディの再生の起爆剤として企画したもの。

アウディRS4アバント
アウディRS4アバント    神村 聖

当初は2200台限定で生産予定だったが人気を博し、最終的に2891台が生産されている。

RS2アバントはポルシェが開発と生産を担当していたが、後継モデルとして1999年にデビューしたRS4(B5)以降は、クワトロGmbH(現アウディ・スポーツGmbH)が開発してネッカースウルム工場内のRSモデル(とR8)専用ラインで、専門チームの手によって1台1台丁寧に生産されている。

RSモデルは、現在ではCセグメント・ハッチバックのRS3から、ラージクラスSUVのRS Q8まで、多種多様なラインナップが用意されている。

パフォーマンス的にはRS5クーペやRS7スポーツバックの方が上ではあるが、今回テストしたRS4アバントは、そのヒストリーからもRSモデルの伝統を最も色濃く受け継いでいるモデルである。

ある意味「RSモデルのメートル原器」的な1台といえるかもしれない。

「RS4=アバント」のイメージ

2世代前のB7(2005-2009)にはセダンとカブリオレも用意されたが、それ以降は現行モデルも含めてステーションワゴンのアバントのみの設定となっているのは、RS4というプロダクトの特徴で、メルセデスAMGBMW Mの競合モデルと大きく異なる。

BMW M3に至っては、逆にステーションワゴンのツーリングが無い(現行世代では登場するとのうわさだが)ほどだ。

アウディRS4アバント
アウディRS4アバント    神村 聖

この理由として考えられるのは、RS4が、そのオリジンであるRS2アバントの時からステーションワゴンであり、市場にアバントのイメージが定着していることと、高性能な4WDシステムを備えたモデルであることから、 走り以外にもクルマを使って自らのライフスタイルを楽しむアクティブなユーザーを呼び込んだことが大きい。

以前、ドイツでRS4アバントの開発エキスパートに聞いたところ、「RS4についてはセダンの要望がほとんど無いので、アバントに絞って開発をおこなっている」と語っていた。

ちなみに現行モデルは、中国市場に初めて導入された一方で、ステーションワゴン不毛の地である北米市場では売っていない。

B9と呼ばれる現行RS4アバントは、2017年秋にフランクフルト・モーターショーでデビュー。

2019年に実施されたA4シリーズの大幅改良に伴い、内外装デザインや装備がアップデートされている。日本では2020年秋に発表され、2021年に入ってからデリバリーがスタートした。

記事に関わった人々

  • 神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 竹花寿実

    Toshimi Takehana

    1973年生まれ。自動車専門メディアの編集者やライターを経て、2010年春に渡独。現地でドイツ車とドイツの自動車社会を中心に取材、日本/中国/ドイツ語圏のメディアに寄稿。2018年夏に帰国、現在は東京を拠点に新型車や自動車業界、モビリティ全般について独自の視点で発信中。海外モーターショーの取材経験も豊富な国際派モータージャーナリスト。

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