【背景にマツダの苦悩?】マツダMX-30のCM 外国人/海外ロケ地をやめたワケ

公開 : 2021.05.11 05:45  更新 : 2021.10.22 10:07

マツダMX-30のCMは日本をテーマに制作されています。背景にはマツダの販売方法や宣伝方法を見直しがあります。

マツダMX-30のCM テーマは日本

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

2019年11月に「日本車のTVコマーシャル、外国人が海外で運転するシーン 理由は? 」という記事を掲載した。

最近は日本車のCMなのに、外国人が海外で運転している映像が増えたからだ。

マツダMX-30
マツダMX-30

マツダも同様で、マツダ3CX-5CX-30など、いずれも海外と思われるシチュエーションで撮影されていた。それがMX-30のCMでは、日本の建築家や音楽家が起用されている。

なぜMX-30のCMは、日本に焦点をあわせたのか。マツダに尋ねると以下のように返答された。

「MX-30はさまざまなお客さまのニーズに寄り添い、マツダブランドの間口を広げるクルマです。その魅力を、これまでのお客さまに、そして新たなお客さまへお届けできるよう、クルマのコンセプトであるわたしらしく生きる、を体現しているアーティストにコラボレーションしていただきました」

日本人で、なおかつCMを職業にしていないアーティストを登場させることにより、MX-30を身近に感じさせる映像に仕上げられている。

外国人ではなく日本人を起用したワケ

従来の外国人が海外で運転する映像をCMで放映する背景には、クルマに注目してもらう目的がある。

日本人が運転すると、心情的にクルマ本体よりもドライバーに目が向き、イケメンだとかカワイイなど容姿が気になってしまう。走っている場所が日本の街中であれば、背景にも目が向く。

マツダMX-30
マツダMX-30

しかし、外国人の運転で、海外の街中や自然の中を走る映像なら、ドライバーや背景に関心が集まりにくい。結果的にクルマに集中してもらえるメリットが生じる。

また海外なら、朝日や夕日を浴びながら荒野を疾走する場面など、日本では撮影不可能な映像表現もおこなえる。

クルマを魅力的に見せるうえでも自由度が広がり、外国人の運転で海外を走るCMが数多く製作されてきた。

その半面、外国人と海外の組み合わせは、当たり前の話だが日本を意識させない。MX-30はこの表現方法をあらためた。

背景にはマツダの苦悩があった。

魂動デザインと宣伝方法 裏目に?

マツダは2012年に発売された先代CX-5から、魂動デザインとスカイアクティブ技術に基づく新しい商品ラインナップを発足させたが、日本では販売面で成功していない。

マツダの2010年(暦年)における国内販売台数は22万3861台だったが、最近はコロナ禍の影響を受ける前の2019年でも、20万3576台に留まる。2020年は17万7043台だ。

マツダ2
マツダ2

販売不振の理由が明らかになったのは、現行マツダ2(旧デミオ)の発売直後におこなわれた市場調査だった。

マツダ2はコンパクトカーだから、さまざまな女性にインタビューしたが、そこからは「マツダ2のようなスポーツ性の高いクルマは、わたしには運転できない」といった意見が多く聞かれた。

魂動デザインとその宣伝方法が、クルマ好きではない普通のユーザーから敬遠されていることが分かった。

2014年に放映されたマツダ2のCMを振り返ると、外国人と海外の街並みが撮影され、キャッチコピーは「クリーンディーゼル×マツダデザイン」だ。

ここから「マツダ2のようなスポーツ性の高いクルマは、私には運転できない」という感想も生まれている。

MX-30のコンセプトは、この経験をベースに生まれた。それは「今までのマツダ車に興味を持てなかったお客様にも振り返って欲しい。マツダブランドの間口を広げるクルマを造りたい」というものだったから、CM表現も従来とは違うものになった。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事