【996+997+991】ポルシェ911 GT3 3世代比較試乗 前世代の集大成を再確認 前編
公開 : 2021.05.15 09:45 更新 : 2021.05.17 15:07
各世代の911の集大成といえるGT3。ドライバーズカーとしての成長を確かめるべく、英国編集部が3世代を乗り比べしました。
過去3世代のGT3で一番イイのは
休日の朝、交通量の少ない郊外の道を飛ばすのに、ポルシェ911 GT3くらい気持ちの良いクルマはほかにあるだろうか。最近の10年ほど、GT3と同時並行でいくつかの素晴らしいクルマが売られていたが、GT3を超えるものはないように筆者は思う。
911 GT3はすこぶる良い。では過去のGT3なら、どれが一番イイいのだろう。最新992型のGT3が、先日発表されたばかり。この機会に、2015年に比較試乗した内容を振り返ってみたい。
筆者の前に、996型と997型、991型という過去3世代のGT3を取り揃えた。内容はどれも標準仕様。サーキット向けにチューニングされていながら公道でも乗りやすいという、ポルシェのビジョンを最も明確に表す世代はどれだろう。
最新のポルシェは最高のポルシェという言葉もあるが、それほど単純とは思えない。一般的なクルマの場合、必ずしもモデルチェンジ毎に良くなるとは限らない。
ジャガーEタイプの後期型は、初期モデル以上に良かっただろうか。最新のBMW M3コンペティションは間違いなく速いが、オリジナル以上にドライバーズカーとして優れているだろうか。
同様に最新のポルシェ911のGT3は、常に先代を超えるものだったのか。比較試乗する以外、確かめる方法はない。
まずは991型。9000rpmまで吹け上がるフラット6に、市場で最高のデュアルクラッチAT、PDKが組み合わされている。四輪操舵システムを備えるが、デメリットを抑えつつ、長くなったホイールベースのメリットを伸ばしている。
メツガー・エンジンを載せた996と997
完成度は非常に高く、とても扱いやすい。475psを効果的に解き放てる。手強い道でも操縦性は抜群。試乗評価では、満点といえる内容を得ている。
991型の先代となるのが、997型911をベースとしたGT3。発表は2006年と、時が進む早さを実感させられる。今回はその後期型を持ち込んだ。
エンジニアのハンス・メツガーが設計したレース用エンジンを載せる、最後のGT3でもある。通常の996型とはまったく異なるユニットで、それ以降のすべての911とも共有していない。
3.8Lから435psを発揮するが、同排気量の991型と比較すれば40psほど低い。そのかわり車重は35kg軽く、少しだけパワーウエイトレシオを改善してくれる。0-100km/h加速は4.1秒。991型のGT3より0.6秒遅い。
この数字の違いは、991型が搭載するローンチコントロールと、クイックなトランスミッションの影響が大き良い。実際のパフォーマンスのギャップは、もっと小さいはずだ。
997型の先輩に当たるのが、996型のGT3。排気量は200ccほど小さいが、こちらも380psのメツガー・ユニットを積んでいる。997型より55ps低く、991型と比べると95psもの違いがある。
3台では一番軽量ながら、997型と比べても15kgしか違わない。0-100km/h加速は4.5秒だ。
近年の価格を見ると、996型のGT3が一番手に届きやすい。それでいて、数は一番少ない。前期と後期に分かれるが、価格差はあまりないようだ。
997型の場合、前期と後期との間には小さくない価格差がある。近年の取引価格は高騰しており、新車を買って丁寧に維持していれば、出費は事実上なかったことにできる。