【新しい未来が見える】トヨタ・ミライへ英国試乗 一新しつつ安価に 航続距離643km

公開 : 2021.05.14 08:25

水素を燃料に電気モーターで走るトヨタ製のサルーン、ミライ。手頃な英国価格で、市場を拡大する可能性はあると英国編集部は評価します。

GA-Lプラットフォームを採用し一新

text:James Attwood(ジェームス・アトウッド)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
燃料電池自動車(FCEV)のトヨタ・ミライ。燃料電池スタックやインフラの整備、水素社会といった、多くのトピックが頭に浮かんでくる。でも、難しい話は後にしよう。

新しいミライは、筆者の目にはトヨタ・セリカの最終型に通じる雰囲気を持つように映る。長いノーズとクーペのようなルーフラインが、そう感じさせるのだろう。わたしだけかも知れないが。

トヨタ・ミライ・デザイン・プレミアム(英国仕様)
トヨタ・ミライ・デザイン・プレミアム(英国仕様)

2代目トヨタ・ミライは、パワートレインも含めて大幅な再設計を受けた、まったく新しいモデル。新技術のショーケースのようなクルマの紹介を、スタイリングから始めるのは少しずれているようにも思えるが、そんなことはない。

空力特性を向上させるために磨き込まれたデザイン、というだけではない。従来以上にミライへ注目を集めたいという、トヨタの願いが込められている。動力源に対する注目以上に。

恐らくこの見た目なら、先代のミライと混同することはないだろう。新しいGA-Lプラットフォームを採用し、ボディサイズも大きくなった。パワートレイン自体も、生まれ変わったといった方が良いかもしれない。

水素から電気を生み出す燃料電池スタックは、ボンネットの中に搭載。従来の370セルから330セルへ減るとともに、小型化され軽量になった。駆動用モーターの最高出力は155psから182psへ向上。駆動輪は、前輪ではなく後輪へ変更されている。

5.6kgの液体水素で643kmの航続距離

燃料電池スタックの位置が変更されたことで、3本目の水素タンク搭載が可能になり、5.6kgの液体水素を蓄えられるようになっている。そのおかげで、一度の水素補給で最大643kmの距離を走行できる。

3本のうち1本は車両下部中央、通常トランスミッション・トンネルと呼ばれる峰に搭載される。もう2本は、リアシートと荷室の下に収まっている。

トヨタ・ミライ・デザイン・プレミアム(英国仕様)
トヨタ・ミライ・デザイン・プレミアム(英国仕様)

ほかに、容量1.24kWhの小さなリチウムイオン・バッテリーも搭載。回生エネルギーを蓄えるほか、燃料電池スタックから駆動用モーターへの電力供給を補助する機能も持つ。ちなみに従来は、ニッケル水素バッテリーだった。

トヨタは最新のFCEVへ惜しみなく軽量化技術を落とし込んでいるが、新しいミライの車重は1950kgと軽くはない。セリカ風のデザインや後輪駆動という駆動方式から、スポーツサルーンを想像するかもしれないが、それはやはり見当違い。

ミライは、快適なクルーザー的なクルマ。乗り心地や操縦性は、大きな20インチ・ホイールを履いていても非常に安楽。普通に運転している限り、最新の技術が搭載されていることを忘れてしまいそうだ。

その点で、新しいパワートレインは良い仕事をしている。驚くほど滑らかで、感心するほど静かだ。

インテリアには、12.3インチのインフォテインメント用タッチモニターが据えられる。沢山の実際に押せるボタンが残され、使い勝手は良い。ステレオは高音質なJBL社製。ヘッドアップ・ディスプレイも有用で、快適な運転をアシストしてくれる。

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