【楽しさの小さな塊】ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW)へ試乗 理想はMT

公開 : 2021.05.24 08:25

3代目ミニがマイナーチェンジを受け、最強版のJCWもアップデート。楽しさは変わらないものの、8速ATが魅力を薄めると英国編集部は評価します。

20周年に合わせてJCWもリフレッシュ

text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
最新のミニには、レスイズモア:少ない方が良い、ということわざが当てはまる傾向がある。馬力や装飾が増えるほど価格も上昇し、上品で小柄なハッチバックの魅力が薄まってしまうように思える。

それは、2021年に向けてアップデートを受けた最新のジョン・クーパー・ワークス(JCW)にも当てはまるだろうか。限定モデルのJCW GPを除き、最も速く、馬力が高く、高価なミニだ。

ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW/英国仕様)
ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW/英国仕様)

BMWがアレック・イシゴニスの発明品を再解釈してから20周年を祝うように、3代目のほかのミニと同様に、ミニJCWもマイナーチェンジを受けた。といっても、見た目の変化は小さい。

特にJCWの場合、ウイングやスプリッターなどのボディキットは従来のJCWと似ているから、違いは観察しにくいだろう。デザインが改められたバンパーと、大型化されたディフューザーがわかりやすい部分だ。

LEDヘッドライトは、グロスブラックのトリムで隈取りされるようになった。フロントグリルも同様に、リデザインされている。

車内では、インフォテインメント・システムが新しくなっている。モニターのサイズは8.8インチと今の水準では小さく見えるものの、グラフィックは鮮明で操作性もいい。

3スポークのステアリングホイールも新しくなっているし、サポート性に秀でたバケットシートも新形状。あちこちにJCWのロゴが散りばめられている。

ボディの内側のJCWは、先代から大きな違いは与えられていない。つまり多くの強化パーツが投入され、クーパーSのECUをリマッピングした以上の内容に仕上がっている。

231psと32.5kg-mで0-100km/h加速6.1秒

ブレーキはブレンボ社製のシステムで、フロントは330mmのディスクに4ポッド・キャリパーが付く。サスペンションのスプリングとダンパーは引き締められ、マルチリンク式のリアサスも含めて、各所で強化と軽量化が図られている。

マイナーチェンジ後のミニで注目となるのが、インテリジェント・アダプティブ・ダンピングと呼ばれるダンパー。鋭い入力が加わるとダンパー内のバルブが開き、柔らかく減衰力を変化させるものだ。

ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW/英国仕様)
ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW/英国仕様)

試乗車のミニJCWには装備されておらず、そのかわり従来の可変式ダンパーが備わっていた。ミニはドライバーがモード選択する必要がないというメリットを主張するが、コスト削減の目的もあるように思える。

エンジンは従来通り少しノイジーな2.0L 4気筒ターボ。最高出力231psと、1450rpmから最大トルク32.5kg-mを発生する。本気を出せば、0-100km/h加速を6.1秒でこなし、最高速度は246km/hに届く。

しかし実際は、この数字ほどは速く感じられなかった。その理由は、1700ポンド(25万円)のオプションとなる8速ATにあるようだ。

とても滑らかに、しずしずと変速してくれるトランスミッションで、燃費効率との相性は良いのだろう。WLTP値での数字も改善している。反面、活き活きとしたスピード感を弱めている。

シフトパドルで自ら段数を選ぶこともできるが、即時的な変速は得られない。トルクコンバーターが仲介し、加速にはどこか鈍い印象を受けてしまう。太いトルクを活かし鮮烈なダッシュを味わいたいなら、MTを選びたいところ。

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