【レースの裏側】サーキットの作り方 設計者に聞く重要ポイント5選 なぜランオフエリアは〇〇なのか?

公開 : 2021.05.16 06:05

コースはどのように作られるのか、いいレースをするために必要なものは何か。現役デザイナーに聞きました。

コース設計の難しさとは

text:Damien Smith(ダミアン・スミス)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

レースサーキットを設計するのは、いったいどれくらい難しいのだろうか?1997年にエイペックス・サーキット・デザイン社が立ち上げられたとき、創業者クライブ・ボーウェンは自らにそう問いかけた。

それから20年以上が経過した現在、彼の会社は約20か所の新しいモーターレース場の設計を担当しており、取材時には2022年に初レースが開催される予定のF1マイアミGPのコース設計に携わっていた。

タイのバンセン・ストリート・サーキット
タイのバンセン・ストリート・サーキット

では、設計はどのくらい難しいのだろうか?なぜすべてのサーキットがスパ・フランコルシャンや鈴鹿のようにならないのか?また、なぜ新しいサーキットには広大なアスファルトのランオフエリアがあり、ドライバーやライダーのチャレンジ精神を奪うことになるのだろうか?

英AUTOCAR編集部はボーウェン氏に、現代のサーキットをデザインする上での重要なルールを教えてもらった。

1. 走りにくいコースにしない

「わたし達は常に、サーキットを静的な建築物ではなく、レーシングカーにとっての動的な環境として考えています。クルマとドライバーが挑戦しやすい環境を作ることが重要です」

「もし、常に限界ギリギリのものを作ってしまうと、ミスを減らすために98%で走りつづけるか、100%で走ってミスを連発するかのどちらかになります。わたしの経験では、より良いレースをしてもらうためには、一見何の問題もないように見えても、トラクションやコーナリング、ブレーキングに影響を与えるような場所に『ミステイク・ジェネレーター』を設置することが重要です」

ニュージーランドのハンプトンダウンズ
ニュージーランドのハンプトンダウンズ

「それは、必ずしもそのポイントで『何か』が起こるのではなく、さらにその先で起こる『何か』の要因になるかもしれないのです」

2. さまざまなマシン・セッティングに対応する

「サーキットを設計する際には、さまざまなセッティングを必要とするようなコーナーのレイアウトを意図的に採用しています」

「そうすることで、チームやエンジニア、ドライバーが、それぞれのスタイルやパッケージのパフォーマンス・パラメータに合わせて、マシンを最適化することができるようになります。DRSによるオーバーテイクだけが見られるわけではないということです」

エイペックス・サーキット・デザイン社はドバイのカート・ドロームなどカート用コースも設計している。
エイペックス・サーキット・デザイン社はドバイのカート・ドロームなどカート用コースも設計している。

3. 鍵を握るのは自然の地形

「グリーンフィールドでもブラウンフィールドでも、与えられたものを使って仕事をするしかありません」

「誰かが『土地があるよ』と言ってきたら、わたしはまず『どんなところですか』と尋ねます。平らなのか?丘があるのか?地面は何でできているか?水路はあるのか?わたしは、自分たちの都合で景観を壊すのではなく、今ある景観の中を走るリボンのようなコースにしたいのです」

マレーシアの首都クアラルンプールの市街地コース
マレーシアの首都クアラルンプールの市街地コース

「さまざまな要素が役立ちます。丘がある場合は、その上にコーナーを設置したり、傾斜やくぼみをうまく利用したりします」

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