【量産メーカーの英断】日産GT-RxトヨタGRヤリスxアルピーヌA110 比較試乗で祝う 前編
公開 : 2021.05.29 09:45
フェラーリを脅かす日産に、ラリースペシャルと呼びたいトヨタ、ポルシェと対峙するアルピーヌ。今という時代に存在する出色モデルを、英国編集部が再評価します。
大衆車ブランドが創生した記念すべき3台
こんな世の中で、存在すること自体が驚きな3台。普通の経営者なら、必要な開発費用と見込める売り上げを俯瞰して、SUVを作るようにエンジニアへ指示するはず。だからこそ、AUTOCARはこの3台の誕生を心から祝いたい。
排出ガスの規制はますます厳しくなり、自動車メーカーの収益は圧迫される一方。英国では、2030年に新車の内燃モデルの販売が禁止される予定にある。この3台へ与えられた寿命は、恐らく長くはない。時代の流れにも企業姿勢にも逆行している。
GRヤリスは、大量のカローラとプリウスを生産する日本の自動車メーカーが開発した。見事なマシンだが、孫の世代まで楽しめるクルマではないだろう。
GT-Rを生産し続ける日産のモデルラインナップには、ミニバンとクロスオーバーが並ぶ。A110のみを生産するアルピーヌは、欧州のミニバン・ブームの火付け役となったルノーの傘下にある。
いずれもが大衆車ブランド。開発を成し遂げたエンジニアへ、感謝せずにはいられない。
まず触れるべきは、3台で一番古い日産GT-R ニスモ。2007年にR35型のGT-Rがリリースされて以来、今まで継続して売られていることに感心する。その間に、ポルシェは911を2世代も進化させている。
スカイライン時代も含めて、GT-Rはカルト的な支持を集めている。R35型も発売当初は、従来の概念を覆す価格と速さが与えられたスーパーカー・キラーとして、多くの注目を集めた。
新しいターボに各部の軽量化
改良を重ねる毎に価格は上昇し、今のニスモの英国価格は18万ポンド(2700万円)。ずば抜けた運動性能を考えても、われわれには高い。進歩の幅が拡大するなかで、長いモデルライフによる開発上のメリットは従来以上に小さくなっている。
反面、眺めているだけでゾクゾクする容姿には、その金額を正当化させるものがある。ダンロップ製タイヤの溝が1本少なくなったと聞いても、大きな驚きはないかもしれない。接地面積は11%増えるということだが。
しかし、ターボチャージャーにも手が入った。GT3のレーシングマシン譲りというターボは、タービンのフィンが1枚減り、残り10枚のフィンは厚みを0.3mm削っている。
ブレーキはカーボンセラミック製が与えられた。ボディまわりにもカーボン製の部品を投入し、新しい鍛造ホイールも獲得。その結果、最新のGT-R ニスモは従来より27kgも軽い。
日産は2017年にインテリアのアップグレードを施し、タッチモニターがダッシュボードに収まっている。それでも、全体のデザインは2007年当初のままだ。
今まで通り、GT-Rのキモといえるディファレンシャルとサスペンション、トラクションコントロールを制御するスイッチ類がコクピットに並ぶ。これでこそ、R35だと思う。
3.8LのV型6気筒エンジンは、536psと67.0kg-mを生み出す。これも今のGT-R ニスモには不可欠。それらすべてが一体となり、0-100km/h加速はたった2.8秒。ゲームの裏技的な速さだ。