【奇しくも同じ日】トヨタ世界初水素レースカー24時間完走 ホンダ32年ぶりモナコGP優勝
公開 : 2021.05.24 19:25 更新 : 2022.11.01 08:41
同じ日にトヨタ世界初水素レースカー24時間完走/ホンダ32年ぶりモナコGP優勝。何が見えるのか。考えます。
あたらしい時代に向けた大きな転換期
2021年5月23日(日)、日本と欧州でモータースポーツに関する大きなニュースがあった。
舞台は、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催された、「スーパー耐久(S耐)シリーズ 第3戦 富士24時間レース」である。
スタート時間は2021年5月22日(土)午後3時で、その24時間後となる23日(日)午後3時にチェッカードフラッグが振られた。
ST-Qクラスに章典外として参加したトヨタ本社直轄下のチーム、カーナンバー32番「ORC ルーキーレーシング カローラH2コンセプト」が358周を走り24時間を完走した。
総合トップのDAISHIN GT3 GT-R(763周)とは周回数で2倍もの開きがあるが、水素を内燃機関で燃焼させるレースマシンが大規模レースに出場するのは今回が世界初。
大きな技術的チャレンジを成し遂げたといえる。
またレースで使用する水素にもこだわりがある。産学官で連携して運用する、福島水素エネルギー研究フィールドで精製された再生可能エネルギー100%由来の水素である。
さらに、同マシンには「モリゾウ」こと、トヨタ自動車の豊田章男社長が自らステアリングを握った。
F1やルマン24時間参戦経験がある小林可夢偉選手ら5人のプロレーサーと共にレースに挑んだことが世界的に大きなニュースとなった。
キモは「アジャイル開発」 必然に
スーパー耐久は、1991年から市販量産車をベースに日本を発祥として誕生したレースでプロとアマチュアのレーサーが仲間となり集う場だ。また、スーパー耐久のレース主催団体は「限りない資源を大切に使い、環境に配慮しながらモータースポーツ社会の発展につなげていくことを目指す」と開催の理念を掲げている。
そうしたスーパー耐久に、トヨタが参戦を決めたのはごく最近だ。
豊田社長は「2020年、わたしはコロナ禍において(豊田市内の)研修所で『疎開生活』をしていた。そんなときに、技術部がわたしにクルマに乗って欲しいと研修所の横にあるダートコースにいろいろなクルマを持ち込んでくれた」という。
そのうちの1台が水素エンジン車だったのだが、そこから1年以内での実戦参加はトヨタとしても異例の早さだ。
この点についてガズー・レーシングカンパニープレジデントの佐藤恒治氏は、「モータースポーツでの開発時間軸は圧倒的に早くて、アジャイルだ」と表現する。
アジャイル開発はソフトウエア開発などで使われることが多く、小さい単位のプロジェクトを集中して短期間に行う手法を指す。
量産車の開発では今後、CASE(コネクテッド/自動運転/シェアリングなどの新サービス/電動化)に向けて、まさにアジャイル開発が必然となる時代。
今回のレース完走は意義深い。