【家族で乗れるクラシック】トライアンフ2000/2500/2.5 英国版クラシック・ガイド 前編
公開 : 2021.06.13 07:05
英国では当初から支持されていたトライアンフ2000。現在も一家で乗って楽しめるクラシックとして、人気を保っています。英国編集部がご紹介しましょう。
モダンなモノコックに滑らかな直6エンジン
スタンダード・トライアンフ社にとって、2000は需要なモデルだった。BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)と真っ向勝負するには規模は小さく、スタンダードというブランド自体は瀕死の状態。
ヘラルドやスピットファイアといったモデルがモノコックへ移行する中で、セパレート・シャシー構造は競争力で劣っていた。そこへ救世主として登場したのが、トライアンフ2000だ。
スタイリングは巨匠、ジョヴァンニ・ミケロッティ。トライアンフ初のモノコック構造で、一気にモダン・モデルの仲間入りを果たした。
見た目に優れ、車内は広々として快適。エンジンは滑らかで静か。経済性に優れていながら、ハンドリングも良好。当時としては飛び抜けて優れたパッケージングだったといえる。
直列6気筒エンジンは、スタンダード・エイトに搭載されていた803ccの4気筒がベース。2気筒を追加し、シルキー・シックスへと仕立てられた。
トランスミッションは、変速を楽にするシンクロメッシュを備えた、新開発の4速MT。リアシートにもシートベルトを装備可能で、フロントシートのリクライニング角度は大きく、ダブルベッドのようにフルフラットにもできた。
ほどなくして、TR5譲りの2.5Lエンジンも選択可能に。駆動系にも必要な改良が加えられ、0-97km/h加速10秒以下という、活発な性能が与えられた。
レブリミットは5800rpmと控えめだが、ロングストローク・ユニットとして賢明な設定。適正なギア比で、最高速度は178km/h。オーバードライブに入れれば、160km/hでのクルージングもいとわない。
Mk2もデザイナーはミケロッティ
増えたパワーを受け止めたのが肉厚なブレーキディスクと、今となってはかなり小さい、幅185の13インチタイヤ。ホイール幅は5Jだった。PI(ペトロール・インジェクション)ではATも選択可能で、ステーションワゴンも登場したが、近年では珍しい。
1969年にマイナーチェンジし、Mk2へ進化。デザイナーはMk1と同様にミケロッティで、サルーンではボンネットが伸ばされ、印象的なルックスを獲得している。インテリアも内装素材やスイッチ類などが一新され、パワーステアリングも装備した。
ステアリングコラムの独特なスイッチ機構や、1974年に追加されたシートベルトの警告灯など、近代化も忘れていない。Mk2になった2000系は、1977年まで生産が継続されている。
PIという名前の由来になったルーカス社製の燃料インジェクションは故障が相次ぎ、1975年に代役の2500Sが登場。2基の大きなSU社製キャブレターと高性能カム、ビスカスファンが与えられている。タイヤは14インチへ大きくなった。
装備などに関わらず、状態の良いサルーンは運転が楽しい。高速域での風切り音以外、車内は驚くほど静かで快適。操縦性に優れ、6気筒エンジンはトルキーで、とても滑らかに充分なパワーを生んでくれる。
近年の悩みは、やはりサビ。以前までは中古車として非常に価値が低く、残っているクルマは走るという目的のために多くの部品が代替品へ変えられている。オリジナルのままの2000系は、見つかりにくい。