【アミとの幸せな暮らし】シトロエン・アミとの数週間 8psの電動マイクロカー 前編

公開 : 2021.06.12 09:45

オシャレなシトロエンのマイクロカー、アミとの暮らしを英国編集部が体験。身長190cmの担当者は、8psの純EVと幸せに暮らせるのでしょうか。

見れば笑顔になり話題にしたくなる

text:Jim Holder(ジム・ホルダー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
みんなが見てくる。笑っている人もいる。口笛を鳴らして、レスポンスしてくる人も。恥ずかしい。もう乗りたくない。

初日の娘の感想だった。10代前半の娘をアミに乗せて、学校へ送り届けた。彼女がスマートフォンで何かを入力しているとわかっていたが、内容は知らなかった。個性的なクルマに乗りたくないと思うほど、恥ずかしがり屋だということも。

シトロエン・アミ(欧州仕様)
シトロエン・アミ(欧州仕様)

そんな娘の気持ちに気付かないまま、筆者は50年ほど前のアミとの違いを楽しんでいた。少しの我慢も許せてしまう。

見れば思わず笑顔になり、話題にしたくなる。奇抜さと賢さの融合で、驚くほど価格は安い。小さい頃に作ったレゴのクルマが、現実になったような気持ちにすらなる。クラスを超越し、ジェンダーフリーな魅力もある。

初日に家の前に停めていると、娘の友人が二度見してく様子が窓から見えた。あるカップルは、一体何なのか、じっくり観察していくようだった。

数週間ほど一緒に過ごしたある日、筆者はロンドン中心部のナイツブリッジにあるデパート、ハロッズまでアミで向かい、駐車場に停めた。隣には、大きなメルセデス・ベンツGクラス。巨大なホイールは、自分が乗ってきたクルマと同じくらいに見える。

アミ固有の溢れんばかりの愛らしさが、ちっぽけという皮肉さを上回って感じた。高級そうな服や靴で身を包んだ買い物客は、クルマのことを詳しく知りたがった。一体何なのか。どこで買えるのか。素晴らしいクルマだと。

放っておけない魅力がある

21世紀に生まれ変わった、シトロエン・アミ。英国へは正式導入されていないが、可能性はゼロではない。筆者の娘のように恥ずかしがり屋でなく、大きなSUVに乗りたいと思わず、45km/hしか出ないスピードに耐えられれば、アミと暮らせる。

アミと数百kmを一緒にして、放っておけない魅力があることがわかってきた。誰もがフランス生まれのこのクルマと、良い友達になれるとは限らないけれど。

シトロエン・アミ(欧州仕様)
シトロエン・アミ(欧州仕様)

筆者は、50年以上前の初代シトロエン・アミをレストアし、大切に乗っているニール・オズボーンのことを思い出した。熱狂的なシトロエン・ファンとして、秘めた能力や魅力を、誰よりも理解している1人だ。

独創的なクルマ作りを継続してきた、誇り高い歴史。彼の好奇心と預金残高を、シトロエンは何度も大きくさらっていった。欧州を巡った家族旅行など、彼の楽しい思い出の中心には必ずシトロエンがいる。

オズボーンに限らず、ファンにとってシトロエンは単なるクルマではない。愛すべき家族の一員なのではないかと思う。

それは、シトロエンがC4カクタスの開発で取り戻そうとしたスピリットだ。小さなアミにも、心の底から似たような気持ちが湧いてくる。

果たして新しいアミは、歴史の中で最も愛されるシトロエンになれるだろうか。従来的な市場とのしがらみ絶ち、第3の選択肢という見られ方を改めることはできるだろうか。強い個性に、反発する人もいるとは思う。

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