【エンジン車消滅の危機?】ユーロ7 過酷な排出ガス規制 ハイブリッドも適応困難か 業界団体反発
公開 : 2021.06.03 06:45
検討が進められているユーロ7では、排出ガスの規制値が厳しくなりエンジンのコストが高くなると予想されます。
コンパクトカー存続の危機
欧州自動車工業会(ACEA)によると、欧州連合(EU)が提案している新しい排出ガス規制「ユーロ7」により、2026年までに内燃機関(ICE)車が消滅する可能性があるという。
2025年に施行予定のユーロ7については昨年10月、欧州委員会から委託を受けた排出ガスの専門家や研究機関からなるコンソーシアム「CLOVE」が最初の具体的な提案を行った。
これに対し、ACEAは12月、「CLOVEが提示した排出ガス規制のシナリオは、新しいテスト条件と相まって、ハイブリッド車を含む内燃機関を動力源とするクルマの禁止に非常に似た状況になると考えている」との声明を発表。厳しい規制に対する懸念を示した。
CLOVEのユーロ7に関する提案では、たとえ修正が加えられたとしても、小型で手頃な価格のICE車の多くが、経済的に生産を続けることができなくなる可能性がある。
また、激しい加速時にも汚染物質の排出を可能な限り少なくする必要があるため、高性能車も深刻な脅威にさらされるだろう。その結果、ユーロ7以降では、トレーラーの牽引をはじめとする「過酷」な運転は困難になる可能性がある。
CLOVEの提案によると、将来のICE車には多段式の「スーパー触媒」が搭載される場合があるという。ガソリンエンジンの場合、電気加熱式触媒、従来型三元触媒、パティキュレート・フィルター、アンモニア・スリップ触媒で構成される。
CLOVEは、この大きな技術的飛躍が「ゼロ・インパクトの排出ガス処理への移行」を意味すると主張した。しかし、ACEAは、このような大型かつ高価な装置を小型車に搭載することは不可能に近く、既存の車両構造に組み込むことは非常に困難であり、販売価格を押し上げることになると指摘している。
さらに、クルマに高度なオンボード診断システムを搭載し、15万マイル(約24万km)の間、排出ガスを監視するという提案もなされている。
規制物質や走行条件も過酷に
自動車業界の関係者の中には、こうした提案の裏に、ICE車を大幅に高価にするか、あるいは環境規制を満たせなくすることで、欧州のドライバーをより多くEVに移行させるとともに、大型貨物車市場の電動化を促進するという裏の目的もあると考えている人もいる。
CLOVEの論文では、2つの新排出ガスシナリオが提案されている。極端なシナリオでは、最新のユーロ6dおよびRDE(実路走行における排出ガス規制)に準拠したエンジンの排出量よりも規制値が低い。また、CLOVEの計算によると、現在のユーロ6d適応車は、通常の走行状態では現行のRDEの規制値を十分に下回っているという。
CLOVEは、NOx、CO、粒子状物質、アンモニア、メタン、NO2(最後の3つは測定対象に追加)を含む全種類の汚染物質の規制値を、世界で最も低いものにしたいと考えている。特に、コールドスタート時、ストップ&ゴー、急加速時、上り坂、トレーラー牽引時など、あらゆる走行シーンで新しい規制値が適用される。
一方、現行のユーロ6dでは、このような極端な走行状況(「境界条件」と呼ばれる)を許容している。これはクルマの耐用年数のごく一部を占めるに過ぎないためだ。
CLOVEが提案する、すべての走行シーンでICE車の排出量を削減しようとする試みに対し、ACEAは否定的な反応を示している。ACEAはこの提案について、次のように述べている。
「最悪のケースをすべて組み合わせた、まったく典型的でない方法(例えば、フル装備のクルマが、低い外気温の下、アグレッシブな運転スタイルで高地の坂道を登っていくなど)で車両をテストすることになる」