【AUTOCARアワード2021】ベントレー危機管理部門 イノベーション賞 柔軟な新型コロナ対応で
公開 : 2021.06.11 06:25
ベントレーはパンデミックの大波を乗り越え、過去最高の販売台数を記録。柔軟かつ革新的な対応が光りました。
本当の意味でのイノベーション
イノベーションにはさまざまな形があるが、必ずしも先駆的な技術や画期的なハードウェアが必要なわけではない。真のイノベーションとは、生産活動ではなく、新しい働き方の発見、意思決定、プロセスの刷新に見られる場合がある。
この1年半ほどの間に、多くの企業が長年培ってきた仕事のやり方を再構築する必要に迫られた。しかし、自動車業界ではベントレーほど成功した企業はほとんどない。ベントレーは、7週間の操業停止と数か月間の販売中断を乗り切っただけでなく、昨年末には記録的な生産および販売台数を達成した。
その成功の鍵となったのは、ベントレーの危機管理タスクフォース(CMT)と執行役員会の決断と行動に示された革新性だった。新型コロナウイルスに立ち向かう同社の取り組みは、英クルー工場へのマスク、アクリル板、社会的距離、一方通行システムの導入にとどまらず、刻々と変化する不確実性の高い状況に迅速に対応するための「新しい働き方」を開発することに根ざしていた。
それは、昨年までの自動車業界、特にベントレーのような102年の歴史を持つ企業にとっては考えられなかったようなスピードで意思決定を行うことで実現した。
「3月に行われたある取締役会で、わたしは従業員用のジムを閉鎖し、拠点間の移動を停止することを提案しました」
人材・デジタル化・IT部門の取締役であり、CMTの議長を務めるアストリッド・フォンテーヌ博士はこう振り返る。
「取締役会は『なぜそんなことをしなければならないのか』と言っていました。それはある木曜日のことでしたが、翌週の木曜日には、工場を閉鎖して全員を帰宅させることで合意しました。それが、物事が進むスピードだったのです」
ベントレーが2020年3月19日に生産を停止した時点で、CMTは1日に何度も会議を開いていた。1回目の会議は、新型のSARS-CoV-2ウイルスが中国に与える影響を検討するために行われた。
「わたし達は、中国からの供給や、中国でのテスト走行、中国のお客様への影響を考えていました。しかし、なぜかわたし達自身には影響がないと思っていました」とフォンテーヌは言う。
多面的かつ迅速な意思決定
1年以上にわたるロックダウンと規制の後では、2020年に新型コロナがどれほど早く、予想外に、そして完全に世界を変えてしまったかを忘れてしまいがちだ。ベントレーのリスクとガバナンスのマネージャーであるスティーブン・ブランチャードは、次のように述べている。
「コロナの課題は、ビジネスに与える影響の大きさでした。もともと危機管理計画はありましたが、それは、例えばサプライヤーのデポでの火災のような、比較的小さな事故に焦点を当てたものでした。わたし達は、業務や販売への影響をすべて把握するために、危機管理計画を再構築する必要がありました」
CMTは6つの「バケット」に再編成され、それぞれが営業、IT、生産、コミュニケーションなど、ビジネスのさまざまな側面に焦点を当てた。また、パンデミックの期間中は、メンバーの構成も変わった。
「あのテーブルに集まった人々の多様性には驚かされました」とフォンテーヌは言う。
「さまざまな分野、役割、そして何よりもさまざまなレベルの人々が集まっていました。見習いも参加して、エイドリアン(・ホールマークCEO)が分析したり、話を聞いたりしていました。わたし達は、お互いの意見に耳を傾けるという包括的な姿勢を示しました。皆、人々と会社を守るという1つの目的のために動いていました」
新型コロナの感染が欧州で拡大するにつれ、CMTはますます頻繁に会合を持つようになった。「ベントレーにとって久しぶりの大きなチャレンジだった」とブランチャードは言う。「しばらくの間、テンポはずっと全速力でした」
3月19日までの1週間が最も激しかった。フォンテーヌは次のように述べている。
「IT部門では、リモートでの作業能力をテストするために3日間のパイロット作業を行いました。木曜日には何が起こるかわかっていたので、カフェテリアとスポーツホールをITサービスセンターに変えたり、同僚のマシンを最新のソフトウェアにアップデートするために総出で作業したりしました。まったく信じられないことでした」
「まるでステロイドを使ったような意思決定でした。毎朝、CMTの会議があり、毎晩、取締役会が更新されていました」