【純EVへコンバージョン】エヴァラティ・ポルシェ964 シグネチャーへ試乗 RRで507ps
公開 : 2021.06.14 08:25 更新 : 2022.08.08 07:30
純EVへコンバージョン(エレクトロモッド)されたポルシェ911。走行性能は向上するものの、空冷フラット6のカリスマ性は失われると、英国編集部は評価します。
もくじ
ーテスラ製ツインモーターで507ps
ーボディはカーボン製 慣れない静かな車内
ー走りの印象はミドシップのケイマンに近い
ー964の魅力はフラット6が生んでいた
ーエヴァラティ・ポルシェ964 シグネチャー(英国仕様)のスペック
テスラ製ツインモーターで507ps
ポルシェは当面、911を純EVにすることはない。でも1989年に発売された964型の911を、純EVにコンバージョン(エレクトロモッド)してくれる企業は存在する。フラット6とガソリンタンクを、駆動用モーターとバッテリーに置き換えたければ。
英国のエヴァラティ社は、様々なクラシックカーへエレクトロモッドの見通しを立てている。ワイドボディ化された964は、同社が可能とする内容と品質、得られるドライビング体験を提示することを目的に誕生した。
その仕上がりは素晴らしい。だが、努力相応の価値があると感じるかどうかは、空冷のポルシェ911や、電動化技術に対する考え方で変わってくるだろう。
今回試乗したエヴァラティ・ポルシェ964 シグネチャーには、テスラ由来のACインダクション・モーターが2基搭載されている。システム総合での最高出力は、507psに達する。
モーターが2基といっても四輪駆動ではなく、共有のシャフトを介して後輪のみを駆動する。途中、リミテッドスリップ・デフも挟まれる。モーターはリアアクスルの後ろにマウントされ、RRという駆動レイアウトは変わらない。
駆動用バッテリーの容量は53kWhで、搭載場所を964から探し出す作業は、難しいものだったという。ほとんどがエンジンルームに押し込まれているが、フロント側にも高圧ケーブルで結ばれて、分割されている。
バッテリーの性能を保つ上で温度管理は重要で、エヴァラティの964は水冷式になった。フロントバンパーの奥に、ラジエーターが載っている。
ボディはカーボン製 慣れない静かな車内
ドライブトレインの変更だけでなく、ボディはドアとボンネット、ルーフ、リアデッキをカーボンファイバー製に置換。インテリアも全面的に貼り直され、DIN規格のステレオ・ヘッドユニットが収まっている。
エレクトロモッドとしては珍しく、エヴァラティの964は急速充電器にも対応する。従来給油口だったリッドを開くと、CCSと呼ばれる充電ポートが付いている。高速なものにつなげば、最短40分で残量20%から80%へ充電できるという。
実際にドアを開いてエヴァラティの964を運転してみる。普段なら後ろから聞こえてくる、心地いいフラット6のサウンドがまったくない。1時間ほど運転したが、筆者は最後まで内燃エンジンの音がないことに慣れなかった。
かといって無音ではない。ブレーキサーボとパワーステアリング用のポンプが動くと、車内へノイズが届く。低速域では、しっかり聞こえる。力強い加速を求めると、駆動用モーターの唸りも響いてくる。
エヴァラティ社は、人工のエグゾーストノートも与えた。悪くはなかったが、筆者はそれが正解なのか判断できなかった。リアを見るとカタチだけ、2本のマフラーカッターが残っている。
動的性能は素晴らしい。最も強力だった仕様の964を超える能力が与えられている。
アクセルペダルを踏むと、少しの間をおいて強力な加速が始まる。ペダルを半分も踏めば、かなり鋭い。そのまま高速道路の巡航速度を超えるまで、加速度は衰えない。アクセルペダルの反応には、少しの遅れがあるようだった。