【BL一筋に50台以上】メトロ・バンデンプラにローバーSD1 エンスージァストの血筋 前編
公開 : 2021.07.11 07:05
ブリティッシュ・レイランドのモデルを救い続ける1人の英国人。カーズリーが大切に維持するコレクションを、英国編集部がご紹介します。
ブリティッシュ・レイランドへの深い愛
本物のエンスージァスト、自動車愛好家とは他人の目や評価を気にすることなく、自分が好きなクルマを大切に所有する人だと思う。読者もそんな1人かもしれないが、英国にもかなりの筋金入りが存在している。
今回ご紹介する、ブリティッシュ・レイランド(BL)の作品を集め続けるアンソニー・カーズリーも該当する1人。仕事は半分引退した状態にあるが、暇というわけではなさそうだ。
英国の高級車ディーラー、ジャック・バークレイで営業マンを務めている彼は56歳。単にBLブランドのファンというだけではない。高級車と聞いて読者が思い浮かべるであろう、ほとんどのクルマに乗ってきた経験がある。
彼が所有するロールス・ロイス・ファントムVIやデイムラーDS420リムジンを駆り出し、ショーファーとしても忙しい。ロンドン・パークレーン通りに面した5つ星ホテルのザ・ドーチェスターへ、お客様をお届けするため。
カーズリーは1970年代から1980年代の古き良きロールス・ロイスやベントレーをこよなく大切にし、周囲の所有欲をうずかせている。だがそれと同じくらい、メトロやローバーSD1、バンデンプラ、アレグロも愛している。
ブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)やオースチン、ローバーといったブランドがコレクションのテーマで、レンジローバーにも広がっている。英国スポーツの代表、MGBと、サルーンのトライアンフ・スタッグにも。
クルマを救うための生き字引級の知識
それぞれに、彼なりの物語がある。黒のMGBロードスターは、オイスターゴールドに塗られたアレグロがベースのバンデンプラとともに、英国では名の通った良家の所有だったという。引き継がないことが、無礼に感じられるほどの。
その取り引きでは、オーバードライブ付きのMTで、レザー内装が与えられたトライアンフ・スタッグも一緒にやってきた。同じガレージに並んでいた、愛情の注がれたフェラーリより遥かに安い値段で。
カーズリーはボディカラーの名称からオプションに至るまで、生き字引級の知識を保有している。高く評価されることのないクルマを救いたいという動機が、その理由だ。
彼が最初に就いた仕事は、生まれ育った英国北部の湖水地方、カンブリアにあるBLディーラーの営業マン。発売されたばかりのマエストロを、お客様へお勧めすることだった。「その仕事が好きでした」。とカーズリーは認める。
「祖父はマンチェスター郊外のボルトンで、大きなBMCディーラーを経営していました。血筋だったのでしょう」。カーズリーの父も、湖水地方でレンジローバーなど魅力的なクルマに乗ってきた。
しかも彼の母は、情熱的なランチア・ファンだった。ストラトスを所有していた時期もあったという。祖母も、同じくらい強い影響を与えたらしい。
「父は、どちらかというと馬に夢中でした。彼は英国馬車競技協会の設立メンバー。フィリップ王子や、著名人が所有する馬と競わせるため、かなりの資金を投じていました」