【屈強なドイツ御三家へ挑戦】ジェネシスG80 2.5Tへ試乗 高級サルーンで欧州参入 前編
公開 : 2021.07.18 08:25
ヒュンダイが仕掛ける、大衆車ブランドからの脱却を目指すジェネシス。ドイツ御三家に挑む高級サルーンを、英国編集部が評価しました。
ドイツ御三家が存在感を強める高級車市場
トヨタがレクサスを立ち上げ、無名のサルーン、LS400で欧州へ乗り込んで来たのが31年前。この土地の高級車市場は、頑丈な殻で覆われた、クルミの実のように見えているかもしれない。
意欲的に挑戦を挑む自動車メーカーは少なからずある。しかし、目の前にある硬い殻を割ることは難しい。
レクサスは2021年になっても、欧州の高級車市場で充分な地位を確立できたとはいえない。努力を続けている。日産のインフィニティは、一度参入したものの諦めてしまった。キャデラックとクライスラーも、過去の記憶だ。
その硬い殻の内側も、甘く美味しいといえるほど単純ではない。スランティス・グループに属する高級車ブランドのDSオートモビルズは、前進を試みているが苦労している。
ジャガーやアルファ・ロメオといった歴史あるブランドですら、現在は好調とはいい難い。大きな池で、必死に立ち泳ぎをしているような状況だ。
こんな市場で、一層存在感を強めているのがアウディとBMW、メルセデス・ベンツというドイツ御三家。他ブランドが入り込む余地は殆ど残されていないようにも見えるが、テスラとボルボは、何とかその隙間をこじ開けようとしている。
ここへヒュンダイは、独自の高級車ブランド、ジェネシスで参入する。挑戦する理由の1つは、競合とは異なる手法で高級なクルマを売り込めると考えているから。インフィニティとも別の手法で。
自動車業界でのプレゼンスを示したい
しかし最も大きな理由は、韓国のヒュンダイ自動車の上層部が抱く、欧州市場で認められたいという願望なのかもしれない。ヒュンダイの会長、チョン・ウィソンは、強くジェネシスを推している。そして、より多くのリスペクトを求めている。
彼個人に対してではなく、彼が執行する自動車メーカーに対して。トヨタやフォルクスワーゲン、BMW、ダイムラー・グループと対等に、自動車業界でのプレゼンスを示したいと考えているようだ。
商業的な成功を収められる世界最高クラスの高級車を、ジェネシスから生み出せることを証明できれば、コングロマリットでの彼の地位はより確かなものになる。高級モデルは、ヒュンダイ・グループのラストピースなのだ。
そんな気合充分のジェネシスだが、ゼロからのスタートというわけではない。過去に欧州から撤退した、ほかの高級ブランドとは少し異なる。
ジェネシスというブランドは、2015年に韓国で立ち上げられた。2020年には13万台ものジェネシスが、世界中でナンバープレートを登録している。しかも、中国への導入が始まる前の段階で。既に基盤がある。
欧州市場へは、2種類のモデルが先鋒として送り込まれる。今回試乗した、アウディA6に近いボディサイズが与えられたサルーンのG80と、先日試乗したQ7に並ぶ7シーターSUV、GV80だ。
今後2022年までに、モデルの選択肢は5種類以上へ増える予定。中には、純EVも含まれる見込み。