【走破性だけではない】デビューは36年前 トヨタ・ランドクルーザー70が今でも生産されるワケ

公開 : 2021.07.11 05:45  更新 : 2021.10.13 12:02

ワクチンの保冷輸送車にランドクルーザー70系が抜擢されました。36年前のモデルが今でも販売される理由を解説します。

ワクチン保冷輸送に抜擢 70ランクル

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

2021年3月、トヨタ自動車から「世界初、ワクチン保冷輸送車のWHO医療機材品質認証を取得」というプレスリリースが発行された。

途上国で、道路インフラが未整備の場所でもワクチンを低い温度に保ちつつきちんと病院や診療所まで輸送するための車両なのだという。

ワクチン保冷輸送車として選定されたトヨタ・ランドクルーザー78。後部には冷蔵庫が搭載されている。
ワクチン保冷輸送車として選定されたトヨタ・ランドクルーザー78。後部には冷蔵庫が搭載されている。    トヨタ

車両自体は新型コロナウイルス用ではなく新生児用ワクチンを想定して開発されたようだが、新型コロナウイルスの輸送手段としての活躍も期待されている。

いま、世界ではワクチンの適切な保冷輸送手段がないために、輸送中の温度変化が原因で新生児用のワクチン供給量の約2割が毎年破棄されている。

それも理由の1つとなって、ワクチンで予防可能な感染症により毎年150万人ほどの子供の命が奪われている現状があるのだ。

今回、世界ではじめてPQS認証(世界保健機関が定める医療機材品質認証のPerformance, Quality, Safety)を取得した車両は車体後半が396L(ワクチンパッケージ400個分)と巨大なワクチン専用の冷蔵庫になっていて、冷蔵庫は独立したバッテリーにより電源なしで約16時間稼働、冷蔵庫のバッテリーは走行中には車両から充電し、駐車中は外部充電から充電可能という。

この車両はトヨタ自動車が車両を、Bメディカル・システム社がワクチン専用冷蔵庫を提供し、車両はアフリカに贈られることになっている。

驚くのは、そのベース車両だ。

走破性の高いランドクルーザーなのだが、なんと78(70系モデル)なのである。

先日公開された最新の「300」でもなく、その前の「200」でもなく、すでに40年弱も作り続けられているクラシックな「ランクル70」というのは意外に感じる人もいるのではないだろうか。

どうして70が選ばれたのか? そしてなぜいまだに古いタイプのランドクルーザーがつくられているのか? 背景には70でなければならない大きな理由があるのだ。

登場36年前 いまだに新車販売続く地域とは?

ランドクルーザー70のデビューは1984年だから、もう36年も前だ。

日本での販売は2004年にいったん終了したが、2014年に復活して1年弱の期間限定で販売された。

日本において2014年に期間限定で復活したランドクルーザー70
日本において2014年に期間限定で復活したランドクルーザー70    トヨタ

なぜ期間限定かといえば、2015年7月からの保安基準に対応できないためだった。

後方から追突された際の、車体下への車両の潜り込みを防ぐルールに適応できないのである。

もちろん後部車体下にガードバーのようなものを装着すれば法規には対応できるが、それを装着するとデパーチャーアングルが犠牲になり悪路走破性が落ちてしまうため「ランクルとしては受け入れられない」として日本販売終了を選んだのである。

期間限定の復活はこれを見越したうえで、「販売できるうちに日本で復活させよう」と企画されたものであった。

一方、海外に目を向けると、ランドクルーザー70はいまだに新車販売が続いている地域がある。

中心となるのは「極地」と呼ばれる、人間が生きていくのに過酷な、先進的な都市の対極ともいえる場所だ。

なぜ、過酷な場所で古いランクルがいまだに必要とされるのか。悪路を走るためだけなら新しいランドクルーザーで統一すればいいではないか?

そう思うのも自然なこと。しかし、その答えは、2つの側面からみると理解しやすい。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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