【尖っていくブランド】ダッジ電動化戦略発表会で「EV売らない」 マッスルカ―本家はどこ向かう?

公開 : 2021.07.12 05:45  更新 : 2021.07.12 10:56

ダッジCEOが電動化戦略発表会で「EV売らない」。一方で、「eマッスル」にも言及。マッスルカー本家の今後に注目します。

電動化戦略発表会でまさかの「EV売らない」

text:Kenji Momota(桃田健史)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

ダッジといえば、アメリカンマッスルカーのド真ん中。

そんなダッジが電動化戦略を発表するというのだから、世界のマッスルカーファンは戦々恐々だった……。

ダッジのマッスルカー
ダッジのマッスルカー    ダッジ

すると、話は思わぬ方向から始まった。

ダッジブランドCEO(最高経営責任者)のティム・クニスキーズ氏はこう言ったのだ。

「DODGE will not sell electric cars(ダッジは電気自動車は売らない)」

電動化のプレゼンで、いきなりこう出たのだ。電動化に関する将来ビジョンを示すといういふれこみだったのに、EVを売らないというのだから驚きだ。

ただし……、これに続けて、こうも言った。

「DODGE will sell American eMUSCLE(ダッジはアメリカンeマッスルを売っていく)」

eマッスルという言葉、ユーザーはもちろんこと、ダッジ以外の自動車メーカー関係者にとって初耳だったはずだ。

eマッスルを額面通り解釈すれば、マッスルカーの電動化であるが、仮にダッジの神髄であるエンジンファミリーのHEMIに電動モーターを追加してのマイルドハイブリッドといわれたら、「それはもうマッスルカーなんかじゃないない」と世界中のマッスルカーファンから総スカンを食らうことになりかねない。

そんなリスクを背負ってまで、なぜダッジはいま、「eマッスルを売っていく」という将来戦略の表現を使うのか?

クニスキーズCEOが次に話したのは……。

若い世代に向けた「eマッスル」

「ダッジの顧客は、テクノロジーではなく、エクスペリエンス(体験)を買っている」という言葉だ。

これを真正面から読むと、マッスルカーは電動化や自動運転など近年注目されている次世代技術とはあまり関係がなく、大排気量/高出力/大トルクをモットーとし、刺激的なエキゾーストノートを奏でる旧態依然とした逸品である、という「時代遅れ感」を強調しているように思える。

ダッジ・チャレンジャー
ダッジ・チャレンジャー

マッスルカーは、とにかくパワフルで、速くて、ドライバーの心にガンガンと打ち付けるようなパッションが最優先というイメージをあらためて持ってしまう。
 
そのうえで、クニスキーズCEOのコメントは意外な方向に触れた。

それは、ジェネレーション(世代)だ。

ダッジのターゲットユーザーを「ミレニアルズ」だとした。

ミレニアム(西暦2000年)前後に社会進出する世代を意味し、80年代前半から90年代にかけて生まれた世代で、現在(2021年)は20代後半から30代後半。アメリカの全人口の約4億人のうち約4分の1を占める約1億人を指す。

現在のダッジの顧客でもミレニアルズが多く、彼らはクルマだけではなく購買力が高く、また新しい時代に向けた関心が高いと、ダッジは分析している。

こうした世代を中心に「eマッスルを売っていこう」というのだ。

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