【次期日産エクストレイルにも搭載?】革新もたらすエンジン「VCターボ」試す eパワーとの相乗効果期待

公開 : 2021.07.16 05:45  更新 : 2021.10.09 23:18

次期エクストレイルにも搭載とうわさされる「VCターボ」搭載4モデルに試乗。「技術の日産」はすごかった?

一気に注目の的「VCターボ」とは?

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)

国内展開されていなかったせいもあるが、画期的な可変圧縮比機構を採用したVCターボの日本における知名度はいまひとつの感がある。

ところが、ここに来て一気に注目度が上昇。次期エクストレイルへの展開が予想されるためだ。

VCターボを搭載する日産車(手前からローグ、QX55、アルティマ)
VCターボを搭載する日産車(手前からローグ、QX55、アルティマ)

次期エクストレイルは概要さえ公表されていないが、このVCターボ車試乗会はVCターボを用いた新型eパワーの登場を予感させるに十分な内容だった。

まずはVCターボの概要だが、一般的には固定されている圧縮比を稼働状況に応じて可変制御しているのが特徴である。

昔からパワーでも燃費でも高圧縮比が有利とされていた。とくに省燃費時代になって高圧縮比による熱効率の向上はエンジン設計の要となっている。

しかし、吸気(過給)圧は稼働状況で大きく変化。圧縮比が高くても吸気した空気の圧力が低ければ、高圧縮比でも点火直前の燃焼室内圧力は低くなってしまう。熱効率で重要なのは点火直前の燃焼室内圧力なのだ。

VCターボの圧縮比可変域は8:1から14:1。8:1が最大過給圧時の圧縮比。単純計算では圧縮比14:1時の1.75倍の過給圧ならば点火直前の燃焼室内圧力は同等になる。

結果的に負荷変動があっても高熱効率を維持。大袈裟にいえば全域高熱効率エンジンなのである。

メカフェチにはたまらない? 仕組みを解説

VCターボ。メカフェチにはたまらない、とでも言いたくなる内部構造である。

通常エンジンと異なるのはピストンピンに取り付けられたシーソー型リンク。片側はコンロッド、逆側は制御機構のロッドと連結されている。

VCターボに関する解説の様子
VCターボに関する解説の様子

ロッドを押し上げるとコンロッド下端が下がり、リンクとコンロッドが構成する角度が強くなり、クランクピンとピストンピンの距離が縮まる。ロッドが下がれば逆に短くなる。

つまり、通常のエンジンならばコンロッド長が変化したのと同じ効果がある。

上死点位置が上下することで燃焼室容積が変化し、それに比例して圧縮比も変わるのだが、ピストンストローク量も多少変化する。

VCターボ第1弾のKR20DDETの場合、圧縮比14:1のときはストローク量は88.9mm、圧縮比8:1のときは90.1mmとなり、排気量では27ccの差が出ている。

実効クランクアーム長も変化しているのだが、高過給側で排気量大ならむしろ歓迎すべきなのだろう。

それにしても運動量の大きなクランクピン周りにけっこう嵩のあるリンク機構を取り付けて、果たして問題なく高回転まで回せるのか、と老婆心全開でVCターボ搭載車へと向かった。

記事に関わった人々

  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

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