【なぜ、2世代分の進化?】毛細管現象が変える、冬タイヤの性能 ブリヂストンの新ブリザック
公開 : 2021.07.16 18:15 更新 : 2021.07.17 14:35
毛細管現象が、タイヤを変える? ブリヂストンが、新スタッドレスタイヤを発表。「2世代分の進化」とされる技術に迫ります。
冬タイヤの定番銘柄 11代目に
ブリヂストンが今年の冬を見据えて、新スタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」の発表を行った。
その技術説明のなかで「2世代分の進化」というフレーズが使われたのは、タイヤという成熟市場の製品では珍しいことだった。
そもそもブリザック・シリーズは、1988年に立ち上げられたロングセラー・ブランドだ。
北海道札幌市のタクシー装着率は69.5%。さらに、北海道/北東北の主要都市では、装着率が20年連続でスタッドレスの1位(いずれもブリヂストンタイヤジャパン調べ)と、降雪地域での知名度・実績は圧倒的。
新モデルの「ブリザックVRX3」は、そのシリーズの11代目となる。
先のフレーズが使われたのは、VRX3の氷上ブレーキ性能について、製品開発管掌が言及した際のことだった。
従来型のVRX2に比べて20%向上というのが、その根拠。
VRX3を履いた車両と、VRX2を履いた車両を同条件で走らせ、同じように氷上でブレーキングする映像は、制動距離の差が出て分かりやすい。
一般的なスタッドレスタイヤのパンフレットでは、多くの新製品が従来型に対して10%前後の氷上ブレーキ性能アップを謳うのが常だから、たしかに2世代分の進化ということになる。
どのようにして、これだけの大差を実現したのか?
水を吸い上げるストローのように
ブリザックシリーズの技術的なコアは発泡ゴム。
ゴム内部に無数の気泡と水路を設けている。
凍った路面でグリップが弱まる原因となるのは水の膜だ。それが、タイヤと氷(路面)の間に入り、密着を妨げる。
従来のブリザックは、ゴム表面に現れる1つ1つの気泡に水が入ることで、タイヤの接地を高める考え方だった。丸い気泡に、いかに多くの水を入れるかに拘っていた。
VRX3では、気泡に“水を吸い上げる”という役割をもたせたのが新しい。
これは毛細管現象(capillary action)を利用したもので、水の入ったコップにストローを入れたとき、ストロー内部の水がコップの水面より上にくることを思い出せば分かりやすい。
また、太いストローと細いストローをコップに入れると、後者の方が水を高い位置まで吸い上げる。
VRX3の気泡の断面図を見ると、縦に長い楕円となっているのが確認できた。丸い気泡に比べて、同じ体積でも吸水力がアップするわけだ。