【崖っぷち日産の本気車】ノート・オーラの新しい価値観 成功する?

公開 : 2021.07.21 05:45  更新 : 2021.10.22 10:07

国内販売台数で勢いが落ちている日産が新たに投入したノート・オーラ。日産の提供する新しい価値観を解説します。

ノート・オーラは豪華志向というより……

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

今までの日本車の価値観は、走行性能やカッコ良さを魅力とするスポーツ指向と、上質な内装や豊富な快適装備を備えた豪華指向に分類されることが多かった。

しかし、2021年6月に発表されたコンパクトカーのノート・オーラは、スポーツ指向でも豪華指向でもない。

日産ノート・オーラ
日産ノート・オーラ    神村 聖

ノートの上級シリーズだから豪華にも思えるが、実際には穏やかなリラックス感覚を重視している。

開発者は「3ナンバー車だから、一見すると豪華だったりスポーティに感じるが、ねらっているところは違う。爽やかさとか、くつろげる感覚を大切にした」という。

この感覚を分かりやすく表現しているのは内装だ。

ベース車のノートに装着されない装備として、インパネの上部などにはツイード調織物が巻かれ、木目調パネルを組み合わせた。色彩はブラックと明るいグレーの2種類がある。

シート生地はツイード調織物と、本革の2種類を選べるが、グレーの色彩は本革シートのみの設定だ。

ツイード調織物のシート生地では、グレーを選べない。これは残念なところ。

ノート・オーラの特徴とされる爽やかさとか、くつろげる感覚を端的に表現しているのは、本革よりもツイード調のシート生地だろう。

デザイナーも「ツイード調の内装を見て欲しい」と述べていた。

この矛盾が生じた背景にあるのは、ノート・オーラの販売戦略だ。

グレーを選べる本革シートのGレザーエディションは、後席のアームレストを含めて、8万9100円の価格アップで用意されている。

この価格は割安だ。ベース車のノートにも、本革シートと後席アームレストがセットオプションに含まれて用意されるが、単品価格を割り出すと約14万円になる。

つまり、ノート・オーラは、本革シートをノートよりも約5万円安く用意して、普及を図るために色彩も豊富に設けた。

ティーダ/キューブの後任 顔面ギラギラ系ではなく

なぜノート・オーラは、スポーツ指向や豪華指向でなく、爽やかさとか、くつろげる感覚を重視するのか。

1番の理由は、スポーツ指向や豪華指向が飽きられてきたからだ。

日産ティーダ(2004年~2012年)
日産ティーダ(2004年~2012年)    日産

今でも派手なフロントマスクのミニバンやSUVが相応の人気を得ているが、価値観としては古くなった。

クルマ以外の流行をみても、バブル経済期に散見された都心の高級ホテルに宿泊するような価値観は廃れた。

自宅の庭でゆったりと休日を過ごすとか、コテージに出かけるような爽やかさ、くつろぎが求められる。ノート・オーラもこの流れに沿っている。

2つ目の理由は、日産が用意していたティーダやキューブの廃止だ。

開発者は「ノート・オーラは、ティーダやキューブの後継車種ではない」というが、車両の雰囲気は良く似ている。

この2車種も、爽やかさとか、くつろげる感覚を先取りしていたからだ。

ティーダは内外装が上質で、ノート・オーラに似たクルマだった。

キューブは全高が1600mmを超える背の高いコンパクトカーだが、前後にソファ風の柔らかいシートを装着して優しい雰囲気があった。

ガラスルーフにはSHOJI(障子)シェードが備わり、これを閉めると車内が穏やかな光で満たされた。

先代ノートも上級グレードとしてメダリストを設定したが、内外装の質感や乗り心地に不満が伴い、ティーダやキューブの後継にはなり得なかった。

そこでボディや内装を相応に上質化したノート・オーラが開発されている。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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