【始まりのキットカー】1959年式ジネッタG2 現存は6台以下 部品の山から再生 前編

公開 : 2021.08.08 07:05  更新 : 2022.08.08 07:27

新車でも珍しい存在だった、ジネッタG2。現存台数は6台もないというブランド最初期のキットカーを、英国編集部がご紹介します。

過去40年間で走った距離は約100km

text:Richard Heseltine(リチャード・ヘーゼルタイン)
photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
顎に伸びたひげを触りながら、エンジンの調子を確かめるオーナー。完璧ではないのかもしれないが、快調にアイドリングしている。彼はボンネットを閉めると、ストラップで丁寧に固定した。

準備は整っている。40馬力のエンジンで、郊外の道を攻め込む時間がやって来た。筆者にとっては、発見の連続のような体験だった。

ジネッタG2(1959年/英国仕様)
ジネッタG2(1959年/英国仕様)

この小さなクルマが走った距離は、過去40年間で100kmほど。モータースポーツでの経験が豊富な共同オーナーの1人は、最近になってサスペンションの調整を施した。細かいところまで、こだわりが詰まっている。

ジネッタG2への乗り降りは、比較的簡単。屋根もドアもない。ペダルが並ぶ狭い空間へ、足をどうにかねじ込みさえすれば良い。

ステアリングコラムとペダルの配置関係には、少し癖がある。足首の関節は、柔軟な方が良い。1952年式ロータスMk VIをはじめとする、1950年代のスポーツ・スペシャルよりは悪くないけれど。

同時期のキットカーほど、着座位置も低くない。1953年のフォード・ポピュラーよりは洗練されている。比べる相手によるわけだ。

1172ccのサイドバルブ4気筒、バンガー・ユニットは、程よくチューニングを受けている。アイドリングはだいぶ滑らか。クラッチは、つなぐか切るか、どちらかだけ。半クラッチの領域がほとんどない。

ステッキのようなハンドブレーキ・レバーを動かし、エンジンの回転数を上げる。一瞬エンジンが苦しそうになるものの、ジネッタG2はそのまま発進する。

驚かされるほど、安心して運転できる

かなりの爆音。筆者の先入観以上に、意欲的に走ることに驚く。フォード社製の3速MTはスムーズに変速できるわけではないが、筆者にとっては親しみのあるギア。さほど難しい作業ではない。

リバースは、通常なら1速がある場所。ゲート間のストロークは非常に短い。当時のモディファイとしては一般的だった、リモート・ギアチェンジにアップデートしてある。変速するときは、ダブルクラッチが必要だ。

ジネッタG2(1959年/英国仕様)
ジネッタG2(1959年/英国仕様)

視界の抜けた区間へ進めば、ジネッタG2はその環境へ見事に溶け込む。年代物のサイドバルブ・エンジンだとは思えないだろう。トルクが太く、意外なほどに柔軟性がある。

短いストレートで、G2を鋭く加速させる。とても楽しい。乗り心地は硬い。これは思っていた通り。直進性に優れ、ドラムブレーキも慌てる必要がないほどに、良く効く。

ステアリングの操舵感には、予想以上に遊びが少ない。ウォームペグ式のステアリングラックは、同時代のフォード社製を改良したもの。ステアリングホイールを握る手のひらへも、無駄な手応えは伝わってこない。

キックバックも殆ど感じられない。神経質な印象もない。驚かされるほど、安心して運転できる。

この手のクルマは、路面のワダチでワンダリングすることが多いが、ジネッタG2は違う。コーナリング中の起伏に気をつけていれば大丈夫。回答性も良い。

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