【航続距離を540kmに延長】フォルクスワーゲンID.3 ツアー・プロSへ試乗 価格もプラス 

公開 : 2021.08.03 08:25  更新 : 2021.11.26 20:29

英国で販売が始まった純EVハッチバックのID.3に、ロングレンジ版が登場。費用は加算されるものの、全方位的な強さが一層高まると、英国編集部は評価します。

77kWhのバッテリーで航続距離は540km

text:James Attwood(ジェームス・アトウッド)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
フォルクスワーゲンの純EVサブブランド、ID.が擁するファミリー・ハッチバックがID.3。そのフラッグシップとして、ツアー・プロSが追加となった。果たして読者は、ID.3の航続距離が伸びるなら、どのくらいの費用まで支払う気持ちがあるだろうか。

今回試乗した、ツアー・プロSのフラットなフロアに搭載されるリチウムイオン・バッテリーの容量は、実質で77kWh。現在英国で販売されているID.3としては、最大の容量を誇る。

フォルクワーゲンID.3 ツアー・プロS(英国仕様)
フォルクワーゲンID.3 ツアー・プロS(英国仕様)

このバッテリーのおかげで、一度の充電で走れる航続距離は540kmまで伸びるという。すでに英国で売られているID.3に搭載されるバッテリーは、45kWhと58kWh。航続距離は349kmと423kmだったから、さらに100km以上遠くまで走れることになる。

もちろん、タダでは長い航続距離は手に入らない。英国の場合、政府の補助金を適用することで、45kWhのID.3なら2万9620ポンド(456万円)から購入できる。しかしID.3 ツアー・プロSの価格は、4万1400ポンド(637万円)からに設定されている。

車両価格が高く、補助金の対象外となるため余計に高く感じられてしまう。ただし、上乗せ金額のすべてがバッテリーに充てられているわけではない。

200kg増を巧みに隠すシャシー

ツアーは英国の最上級トリムグレードになり、19インチのアルミホイールを含む、様々な装備が標準で追加となる。デュアルゾーン・エアコンにキーレスエントリー・システムのほか、最大125kWにまで対応できる急速充電機能も備わる。

拡張現実機能付きのヘッドアップ・ディスプレイも標準装備。ナビゲーションの案内などを、フロントガラスの大きな面積に投影してくれる。市場をリードするというほどではないにしろ、一度慣れてしまうと、かなり便利なシステムに思える。

フォルクワーゲンID.3 ツアー・プロS(英国仕様)
フォルクワーゲンID.3 ツアー・プロS(英国仕様)

駆動用バッテリーが大きくなるぶん、車重も1934kgに増えている。58kWhのID.3と比較して200kgほど重い。ちなみにリアシートは2名がけで、定員は4名だ。

増えた重量をシャシーは巧みに隠している。動的な性能や乗り心地の面で、トレードオフといえるような影響は殆ど感じられなかった。

ID.3のマックスと呼ばれるグレードにはアダプティブダンパーが備わるが、プロSには付いてこない。加えて試乗車はオプションの20インチ・ホイールを履いていたにも関わらず、乗り心地は妥当な水準にあるようだ。

ツアー・プロSが搭載する77kWhのバッテリーが重いとしても、フォルクスワーゲンらしく快適に運転でき、好感触なことに変わりはない。初めての純EVとしてID.3を選んでも、多くの人が親しみやすく感じるだろう。

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