【スーパーカーに並んだサルーン】フェラーリ328とアルファ・ロメオ・ジュリア 技術進歩を実感 前編

公開 : 2021.08.07 09:45

絶えず進化を重ねてきた、自動車技術。内燃エンジンの絶頂期にある今、憧れのスーパーカーと現代のスポーツサルーンを、英国編集部が比較しました。

10代だった頃の憧れのクルマと比較

text:Simon Hucknall(サイモン・ハックナル)
photo:Max Edleston(マックス・エドレストン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
筆者が10代だった頃、部屋の壁には大きな1枚のポスターが貼られていた。308 GT4から308 GTB、308 GTSと512 BB、400i GTに至るまで、1979年のフェラーリのモデルラインナップを一覧に並べたものだった。

画像の下にはスペックが記されていた。今でも、すべての数字を覚えている。

レッドのフェラーリ328 GTBと、ブルーのアルファ・ロメオ・ジュリア・ヴェローチェ
レッドのフェラーリ328 GTBと、ブルーのアルファ・ロメオジュリア・ヴェローチェ

フェラーリが備えていた先見の明を感じる。ポスターを見て夢を抱いた少年が、40年後にフェラーリを所有する可能性を見越していたのかもしれない。変わらず夢のまま、ということも多いけれど。

筆者の場合、今もまだフェラーリのオーナーにはなれていない。それでも、今でも特別にお気に入りの1台が存在している。恐らくAUTOCARの読者なら、そんなフェラーリがあるはずだ。

フェラーリを憧れの存在に高めた要素が、当時の自動車として頂点にあった馬力や走行性能だ。しかし遠くない将来、欧州では内燃エンジンを搭載した新車の販売が禁止される。電動化が避けられない2021年の今は、内燃エンジンの絶頂期にあるといえる。

自動車の技術は、ここ40年の間に大きく進歩を遂げた。しかし、小さな段階を重ねての変化であり、自動車メーカーが達成した成果を実感しにくいことも確か。

今回は、筆者がハイティーン時代に夢見ていた1台と、最新のファミリー・サルーンとを並べてみることにした。1985年に発売されたフェラーリ328 GTBと、ブルーのアルファ・ロメオ・ジュリアだ。

1344台のみが作られた、クーペの328 GTB

ご登場願ったジュリアは後輪駆動で、退屈な通勤用サルーンというわけではないが、クアドリフォリオでもない。2.0Lの4気筒ターボガソリンを搭載し、苦労せずとも10.6km/Lの燃費を出せるヴェローチェだ。

大人5人と充分な荷物を載せられ、エアコンも良く効く。800km離れた目的地へも、一足で目指せる。英国価格は4万ポンド(616万円)を少し超える程度。安いサルーンではないが、スーパーカーの値段と比べれば遥かに手頃ではある。

フェラーリ328 GTB(1985年/英国仕様)
フェラーリ328 GTB(1985年/英国仕様)

1987年、新車のフェラーリ328を英国で買うには、4万4196ポンドを準備する必要があった。現在の価値で換算すると、12万7000ポンド(1955万円)に相当する。当時の裕福な層にとっても、小さな金額ではなかったはず。

フェラーリは1985年から1989年の間に、328を7412台生産している。その中で、クーペのGTBは1344台だけだった。

今回グッドウッドにお招きした328 GTBの場合、オプションのABSが装備されていて、一層珍しい。ラインオフから33年が経つが、走行距離は約1万800kmと驚くほど浅い。ブルーのジュリアと、ほぼ同じ距離しか走っていない。

恐らく現在手に入る328 GTBの中でも、トップクラスに状態が良い1台だろう。でも装備の内容は比べる気が起きないほど、あまりにも違う。328 GTBには、標準でラジオすら付いていなかった。

ジュリアには、タッチモニター式の多機能なインフォテイメント・システムが備わっている。当時のフェラーリ・オーナーが見たら、感銘を受けるかもしれない。

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