【環境汚染は少ないのに】どうなるクラシックカー 風当たり厳しい社会 市場規模は莫大

公開 : 2021.07.28 06:05  更新 : 2021.07.28 18:21

エンジン車の廃止など、世界的に環境規制が強まる中、古き良きクラシックカーの居場所は失われつつあります。

見えない将来性

text:Jim Holder(ジム・ホルダー)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

クラシックカー関連のイベントは世界各地で開催されている。小さな村で行われる20台程度の小規模なものから、サーキットなどで行われる大規模なものまで、旧車ファンを楽しませるイベントは幅広く、奥が深い。

しかし、エンジン車の廃止やEV化が進む中、クラシックカーは年々厳しい状況に追い込まれている。特に今年は深刻な状況に直面しており、例えば、最近英国で行われた某イベント(80台が集まった)では、開催にあたり法的な承認を得るために4000ポンド(約600万円)が必要だったという。

性能の良い新車を買うか、古いクルマを乗り続けるか。どちらが環境に優しいのだろうか。
性能の良い新車を買うか、古いクルマを乗り続けるか。どちらが環境に優しいのだろうか。

こうした主催者側の苦労の背景には、将来の不確実性がある。

エンジン車の新車販売が10年以内に禁止されるとしたら、クラシックカーイベントはどのような意味を持つのだろうか?

排気ガスの匂いを嗅いで育った世代が減っていく中で、いつまで続けられるのだろうか?

もし、燃料となるガソリンや軽油が手に入りにくくなったり、価格が高騰したりして、クルマに給油することができなくなったら?

あるいは、人々の移動を1世紀に渡り支えてきたエンジン車が、地球にダメージを与え、取り返しのつかないことになってしまったとしたら?

かつて、タバコの喫煙が奨励された時代があった。いつの日かエンジン車にも健康上の警告文が表示され、反対する社会から愛好家たちの居場所がなくなってしまうかもしれない。

1つの「カルチャー」として

英シンクタンクの経済ビジネス・リサーチ・センター(CEBR)は今年、クラシックカーやヒストリックカー市場の年間売上高を183億ポンド(約2兆7800億円)と評価した。これはスコッチウィスキー産業の2倍であり、芸術産業全体に匹敵する規模だ。クラシックカーイベントを支える愛好家クラブだけでも、英国経済に5億ポンド(約760億円)の貢献をしていると言われている。

一方、ヒストリック・エンデュランス・ラリー・オーガナイゼーションによると、平均的なクラシックカーの1年間あたりの走行距離は1930kmで、CO2排出量は600kg以下と推定されている。これは、携帯電話を1年間使用した際に発生する量の約半分である。

いつか、エンジン車がタバコのように煙たがられてしまう時代が来るのかもしれない。
いつか、エンジン車がタバコのように煙たがられてしまう時代が来るのかもしれない。

大気汚染への影響はごくわずかで、経済的なメリットは膨大、目に見えない恩恵は更に大きい。

馬が輸送手段ではなくなった後も、馬術は長く繁栄してきた。ルールを作る側には、安易な成功を求めるのではなく、クラシックカーを守り、称えるという先見性があることを期待したい。

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