【足りなかったのは?】東京五輪の大規模交通規制 メディアの“務め”とこれから
公開 : 2021.08.07 11:50 更新 : 2021.12.13 21:26
東京2020オリンピック・パラリンピックで話題になった、大規模な交通規制。渋滞の報道が目立ちましたが、そこから見える課題と学びを伝えます。
かつてない規模の規制 事前の準備は?
新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が始まった。となるとクルマに乗る人にとって気になるのが、道路の交通規制だ。
東京の道路で交通規制が行われることは、珍しいことではない。これまでも外国要人の来日や箱根駅伝、東京マラソンなどで実施してきた。しかし東京2020大会はオリンピックが7月21日から19日間、パラリンピックは8月24日から13日間と、合わせて1か月以上の開催になる。
しかも1964年に開催された前の東京大会と比べると、オリンピックの競技数は20から33と1.5倍以上になったこともあり、都内だけでも会場・施設があちこちに点在。選手をはじめとする関係者が毎日のように縦横無尽に移動することになる。
生まれたときから首都圏でずっと暮らし続けてきている筆者も、ここまで大規模かつ長期間にわたる交通規制が東京で実施された例は記憶にない。とはいえ選手が普通の人に混じって電車・バスに乗るわけにはいかない。
なので多くの交通規制はかなり前から検討され、多くは事前に発表された。筆者も1年半前に、他のメディアで似たようなテーマの記事を書いているほどだ。
そのときの記事を振り返ると、すでに東京2020大会の公式ウェブサイトには大会中の交通マネジメントの説明があり、一般道路では大会前の交通量の10%減、競技会場が集中したり通過交通が多く混雑したりする重点取組地区および首都高速道路は30%減を目指すという記述があった。
首都高速も30%減としたのは、大会関係者の移動ルートに設定したからだ。この発想には賛成だった。自動車専用道路なので安全確実に移動が行えるからだ。
こうした都市高速を持たないロンドンで2012年に開催した大会では、240kmにも及ぶ専用レーンや優先レーンを用意した。首都高速を活用したほうがはるかに効率的だ。
規制初日 問われるメディアの姿勢
2019年夏には本番を想定した実験まで行われた。
首都高速の一部の入口閉鎖や料金所ゲート制限、環状7号線内側の一般道路の通行制限などをしたうえに、企業などに混雑緩和に向けたテレワーク取り組みなどのお願いもした。
しかし当時はコロナ禍前で、多くの企業にとってテレワークなど夢のまた夢。結果は約7%減に留まった。そこで首都高速の料金1000円上乗せが決まった。ショック療法が必要だと感じたのだろう。
トラックやバス、緑ナンバーの営業用車などエッセンシャルワーカーのための車両の料金は据え置き、マイカーなどだけ1000円上乗せとする、より説得力のある内容も、翌年4月には決まっている。一般道路の交通規制も、国立競技場周辺で通行止めなどの措置を取ることは、事前に発表していた。
なので1000円上乗せが始まった初日の7月19日に、並行する一般道路が渋滞している様子をマスコミが数多く報じたことには驚いた。
交通規制の内容はかなり前から公開されている。なのに知らなかった人が多いという論調だった。数年前、大型台風の上陸に備えて首都圏の鉄道が計画運休を発表したとき、スマートフォンを手に持ちつつ「電車止まっていてびっくり」という人が紹介されて話題になったが、日本はその頃から進歩していないようだ。
しかも筆者がよく使う、首都高速4号新宿線が上を通る国道20号線を何度か走った結論を言えば、いつもより空いている日さえあった。渋滞している道路を探し出して騒ぎを大きくし、オリパラ批判につなげようという恣意的な報道であったことは、その後が続いていないことで明らかだ。