【静寂な空間で際立つ】変わるクルマとスピーカーの関係 電気自動車でさらに

公開 : 2021.08.18 05:45  更新 : 2021.10.20 17:32

日産とBOSEが手を組みカーオーディオを開発。次世代日産の象徴「アリア」における「音」の開発秘話を取材しました。

静かなクルマ=音を楽しむ空間に

text:Satoru Uno(宇野智)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

メルセデス・ベンツは「ブルメスター」、BMWアウディは「バング&オルフセン」、ジャガーランドローバーは「メリディアン」、国産車ではトヨタが「JBL」、日産マツダが「BOSE」と、自動車メーカーが高級オーディオメーカーとタッグを組んで、モデルごとに専用オーディオを開発するようになってから随分と経つ。

ちなみに、世界初の車種専用設計のプレミアムオーディオはBOSEのもので、1983年に発売されたキャデラック・セビルに搭載された。

日産アリア
日産アリア    日産

しかし、ここのところ急激に襲ってきたEVシフトの大波は、オーディオメーカーにも影響を及ぼすはず。

内燃機関を積んだクルマより圧倒的に静粛性の高いEVは、より最適な環境のオーディオルームにもなり得る。

EVでは、ロードノイズの車内への侵入抑止から風切り音の低減まで、綿密な設計を行い静粛性を担保する。これは、オーディオの音の良し悪しが、より明確にわかるようになっただけでなく、今まで以上に、より良い音が聴ける環境となった。

EVではないが、シリーズハイブリッドの「eパワー」専用モデルとなる日産ノート・オーラの試乗会に参加したとき、試乗車に日産と共同開発の「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」が搭載されていた。

ノート・オーラは、標準型ノートをベースに防音材を追加し、第2世代「eパワー」ではエンジン制御を見直して静粛性が向上されており、BOSEの音の良さが際立った。

試乗会にはBOSEの担当者が来ており、製品の特徴や開発工程の一部についてのひとしきりの話しを伺い取材を終えた。

その後、日産から新型高級SUVでEV「アリア」の国内予約注文開始のオンライン発表がおこなわれた。

そのアリアにも、BOSEのプレミアムサウンドシステムが採用されていることも明らかとなった。

そこで、日産へBOSEプレミアムサウンドシステムについての詳細を問い合わせたところ、BOSEのマーケティング担当者と個別のオンライン取材の機会を設けてくださった。

クルマでの「音づくり」 難易度が高い?

取材にご対応いただいたのは、BOSE シニアマーケティングマネージャーの鈴木玄氏。

まずは、アリアのプレミアムサウンドシステムを日産と共同開発するに当たっての根幹部分を成す、BOSEのカーオーディオにおける「サウンドフィロソフィー」の解説を受けた。

日産ノート・オーラ
日産ノート・オーラ    日産

その「サウンドフィロソフィー」は、Spatial(空間表現)、Spectral(周波数特性)、Large Signal(大音量でのパフォーマンス)の3つで、それぞれについては以下のような説明があった。

Spatial(空間表現)は、原音に忠実で車室のサイズを感じさせない音場、コンサート会場にいるかのような感覚と興奮をもたらす。スピーカーの位置を感じさない、包み込まれるようなリスニング体験を実現する。

Spectral(周波数特性)は、音楽に繊細なディテールを与える高音域、自然なボーカルを再現する中音域、体を震わせるようなパワーをもたらすリッチな低音域をもたらす、すべての周波数帯域を忠実に再現する。

Large Signal(大音量でのパフォーマンス)は、フルオーケストラの大音量においても、空間表現と周波数特性を崩さず、不快な歪みを起こさない。

また、これらのフィロソフィーは、BOSEの成り立ちが、コンサートホール音響を再現するための研究であったことを起源とする、室内音響への取り組みがBOSEのレガシーとなっているとのこと。

カーオーディオは、家庭で聴くオーディオとは異なり、空間が狭いうえ、リスナーからみて左右非対称となるスピーカー配置、複雑かつ近い距離にある音の反射体や吸収体の数々があり、原音に忠実で再現性の高い音の再生が難しい環境となる。

よって、オーディオメーカーは、クルマでの音つくりが腕の見せどころにもなる。

記事に関わった人々

  • 宇野智

    Satoru Uno

    1974年生まれ。前職はSE兼営業で副業が物書き。自動車ウェブメディア編集長を経て、2021年2月からフリー。現在の基礎はカタログ少年時代、食事中はTVを見るより諸元表を見ていたことに始まる。陸海空の乗り物全般と猫とカメラとガジェットをこよなく愛する。取材/執筆/撮影/編集はもはやライフワークに。結果、キャパオーバーで自爆すること多数。

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