【93年前のベンツ】5.9億円で落札 ボナムス・クエイル・ロッジ・オークションを解説

公開 : 2021.08.16 06:15  更新 : 2021.10.11 10:49

1928年のメルセデス・ベンツが、約6億円で落札されました。北米で開催された、ボナムス・クエイル・ロッジ・オークションの結果を分析します。

ボナムスの最高峰に、139台の希少車

text:Kazuhide Ueno(上野和秀) / photo:BONHAMS

世界的なカーイベントが行われる北米のモントレーカーウィークでは、トップレベルのオークションが開かれるが、その先陣を切ってボナムス社のクエイル・ロッジ・オークションが8月13日に開催された。

北米・カーメルにあるクエイル・ロッジ・ゴルフクラブで開かれるレーシング・マシンとクラシックカーのための格式の高いイベント「ザ・クエイル・モータースポーツ・ギャザリング」がその会場だ。

マニアックな139台のコレクターズカーが用意された「ボナムス・クエイル・ロッジ・オークション」を解説。落札率は88.4%と好調だった。
マニアックな139台のコレクターズカーが用意された「ボナムス・クエイル・ロッジ・オークション」を解説。落札率は88.4%と好調だった。    BONHAMS

ボナムスにとってもトップクラスに位置づけられるオークションとあって、選りすぐりの希少車が集まることで知られている。

昨年は、新型コロナウイルス感染症の蔓延からオンラインとリアルの併催に。しかし、コロナ禍の影響から盛り上がらず、100万ドル(約1億700万円)以上の車両はほとんどが流れてしまい、1000万円以下の現実的なものが落札されていた。

今年はコロナ禍が一段落した感のあるアメリカだけに、リアル中心の開催となった。希少車が139台も用意され、その内100万ドル(約1億1000万円)以上の予想落札額が発表されたのは13台にも及ぶ。

主役格といえるのは、世界スポーツカー選手権に向けて製作された1967年フォードGT Mk-IVと、1974年アルファ・ロメオ・ティーポ33 TT12で、開催前から注目を集めた。

さらには、クラシック・モデルでは極みの存在といえる1928年メルセデス・ベンツ26/120/180 Sタイプ・スーパーチャジドと、1948年タルボ・ラーゴT26レコード・スポーツ・カブリオレ・デカポタブルを用意。

日本のファンにとって興味深いのは、左ハンドルのスバル360と、トム・ハンクスがオーダーしたシボレーV8エンジンを積むトヨタランドクルーザーFJ40ハードトップ、そして日本から渡った日産スカイラインGT-R R32 VスペックIIが会場に並んだことだ。

最高額は5.9億円 高額トップ10は?

今年のクエイル・ロッジ・オークションは、通好みの渋いクルマが多く、最近の主流になっている近年のスーパースポーツの姿はなかった。それだけに21世紀のクルマは8台だけだった。

2014年にコレクターズカー・バブルが勃発して以来、オークションへ投機マネーが流れ込んでいた。しかし、クエイル・ロッジの出品車はコアすぎたようで、このあとに開かれるRMサザビーズや、グッディングに行ったように感じられる。

高値1位:1928年 メルセデス・ベンツ26/120/180 Sタイプ・スーパーチャジド・スポーツ・ツアラー(5億9345万円)
高値1位:1928年 メルセデス・ベンツ26/120/180 Sタイプ・スーパーチャジド・スポーツ・ツアラー(5億9345万円)    BONHAMS

それでも1年ぶりの最高峰といえるオークションだったことから、終えてみれば最終的な落札率は88.4%と大いに盛り上がった。

13台の出品を数えた100万ドル超えの車両は、7台が落札され、100万ドルまで数万ドル及ばないものも含めると10台が決着するという好調ぶりである。

ボナムス・クエイル・ロッジ・オークションのトップ10は以下のとおり。最近のオークションとは大きく異なるマニアックな顔触れが並んだのが特徴だ。

どれも投機筋には難しいモデルで、せいぜい300SL、コブラ、DB5が理解できる範疇と思われる。しかし、どれも最高値に近い額に達しているので、投機としては旨味が見出せないため、本当に欲しいコレクターが競り合ったといえる。

落札額 トップ10

1位:1928年 メルセデス・ベンツ26/120/180 Sタイプ・スーパーチャジド・スポーツ・ツアラー(5億9345万円)
2位:1948年 タルボ・ラーゴT26レコード・スポーツ・カブリオレ・デカポタブル(2億625万円)
3位:1952年 フェラーリ212エウローパ・カブリオレ・ギア(2億20万円)
4位:1955年 メルセデス・ベンツ300SLガルウイング・クーペ(1億8810万円)
5位:1974年 アルファ・ロメオ・ティーポ33 TT12(1億8447万円)
6位:1966年 シェルビー427コブラ(1億1550万円)
7位:1964年 ACコブラ289(1億945万円)
7位:1966年 シェルビー・コブラ427(1億945万円)
9位:1934年 ライレーMPHスポーツ2シーター(1億643万円)
10位:1965年 アストン マーティンDB5(9614万円)

最高値を記録したメルセデス・ベンツSタイプは、120bhpを発揮する6.8L直6にルーツ式スーパーチャージャーを搭載し、フル加速時に60bhpの出力アップを得る高性能モデル。1927年までに146台(136台という説も)が製造され、それらのオーナーにはサー・アーサー・コナン・ドイル、アル・ジョルソン、マルクス兄弟らが名を連ねる。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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