【意外な敵?】ダイハツ・タント苦戦の背景 カギを握るムーヴの好調 

公開 : 2021.08.22 05:45  更新 : 2021.10.13 12:01

王者Nボックスのライバル、ダイハツ・タントの販売台数が伸び悩み。身内の「スライドドア車」の影響もあるといえます。

王者Nボックス 今年度も独走

執筆:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
編集:Taro Ueno(上野太朗)

ホンダ「Nボックス」の勢いが止まらない。

2021年上半期(1月~6月)の販売台数は11万551台。文句なしに国産乗用車の人気ナンバー1である。

ダイハツ・タント
ダイハツタント

というと「トヨタヤリスの同時期の販売台数は11万9112台だから、ヤリスのほうが売れているではないか」という人もいるかもしれない。

しかし、公表されているヤリスの販売台数はハッチバックの「ヤリス」とSUVの「ヤリス・クロス」、そしてプラットフォームからしてハッチバックとは別設計のスポーツモデルである「GRヤリス」まで3つのボディを合算したもの。

いわば「ヤリス・ファミリー」としての数字で、単独車種の販売を示すものではない(内訳はハッチバックのヤリスとSUVのヤリス・クロスがほぼ半分ずつ)。

つまり、いわゆる販売ランキングとして公表されているヤリスの販売台数は、ホンダの軽自動車に例えるならば「Nボックス」と「Nワゴン」に「Nワン」、そして「Nバン」まで合計した「Nシリーズ」の数字といっていいだろう。

そう考えると、単独で毎月約2万台も販売しているNボックスの勢いはとんでもないということが理解できる。

では、Nボックスに続く軽自動車販売ランキングはどうなっているのだろうか。

台数伸び悩むタント その一方で……

2021年上半期の上位5台をみてみよう。カッコ内は一般的な分類でのジャンルだ。

1位 ホンダNボックス:11万551台(スーパーハイトワゴン)
2位 スズキスペーシア:7万8698台(スーパーハイトワゴン)
3位 ダイハツ・タント:6万9262台(スーパーハイトワゴン)
4位 ダイハツ・ムーヴ:5万7761台(ハイトワゴン)
5位 スズキ・ハスラー:4万8221台(ハイトワゴン)

独走状態のホンダNボックス
独走状態のホンダNボックス

Nボックスがダントツだということが分かるのと同時に、売れ筋上位はスーパーハイトワゴンが独占していることも理解できる。

一方で興味深いのが、タントが3位の座に甘んじていることだ。

初代モデルが2003年にデビューしたタントは、スーパーハイトワゴンというジャンルを切り開いたパイオニアである。

Nボックスもスペーシアもそんなタントの成功を受けて登場したフォロワーであり、もしタントがなければ世に出てこなかっただろう。

そんな関係性であり、しかもこの3台のなかでタントがもっとも新しい(昨年フルモデルチェンジしたばかり)にもかかわらず、タントが3位の座にとどまっているのだから意外なものだ。

もっと売れてもおかしくはない。

それとは別に、ランキング上位5台を見て興味深いことがある。

スーパーハイトワゴンではライバルにリードを許しているダイハツながら、「ムーヴ」が4位とハイトワゴンではトップにつけているのだ。

ハイトワゴンはスーパーハイトワゴンに比べると背が低く、各社の定番モデルはホンダだとNワゴン、スズキは「ワゴンR」となる。

タントの販売が伸びないことのヒント。

そのカギを握っているのはムーヴの好調にあると考えられないだろうか。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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