【打倒巨人は叶うのか】フォルクスワーゲン・ゴルフGTI x BMW 128ti x ホンダ・シビック・タイプR 前編
公開 : 2021.09.04 09:45 更新 : 2021.09.06 15:29
ホットハッチの定番、VWの最新ゴルフGTIが対峙することとなったBMW 128ti。交代間際の巨人、シビック・タイプRと三つ巴の比較試乗です。
FFホットハッチの巨人、シビック・タイプR
英国ホンダへ電話を掛けた。自動車ジャーナリストとして、いつものこと。3台の比較試乗に向けて、クルマを借りるお願いだった。
ホンダに限らず、比較試乗のような取材は広報側の議論を巻き起こす。内容に対するメリットとデメリットが天秤にかかる。比較するわけだから、勝敗が付けられる。勝つ見込みがなければ、クルマは貸し出さない方が良いかもしれない。
でも、難色を示されることはなかった。好奇心混じりに、「どんなクルマと?」。と聞かれた程度。「問題ないですよ。いつ必要ですか?」。その程度のやり取りで済んだ。
ホンダ・シビック・タイプRは、フロントドライブ・ホットハッチの圧倒的な勝者として、ここ数年君臨している。広報担当者であっても、比較相手を心配する必要はないのだろう。
2015年の登場以来、FK8型のホンダ・シビック・タイプRは、AUTOCARのグループテストをすべて勝利している。無敗なのだから、ホンダ側の自信もうなずける。
カテゴリー内でこれほどの強さを示したモデルは、ほかにポルシェ911 GT3と、過去のフォード・フィエスタSTくらい。ポルシェ・タイカンが登場する以前のテスラ・モデルSも圧倒的に強かったが、ほかには思い浮かばない。
シビック・タイプRが属するカテゴリーには、ライバルが非常に多い。ホンダの成し遂げた偉業は、ほかのモデルよりも称えるべきものだと思う。対戦相手は、無敗記録を今回で終わらせることができるのだろうか。興味深い。
BMW 128ti vs ゴルフGTI クラブスポーツ45
不足ない実用性と、吟味された人間工学が与えられたホンダ・シビック・タイプR。それでいて、見た目も走りも、ホットハッチの中では最も熱の入った位置に該当している。すべてのドライバーの方を向いているわけではない。
お借りしたモデル末期のシビック・タイプRは、通常より47kg軽量な、英国で20台限定のリミテッド・エディション。サンライト・イエローのみで、英国価格は3万8690ポンド(595万円)する。次期型が迫るFK8型として、最も研ぎ澄まされた仕様といえる。
対する2台は、新しいBMW 128tiと、8代目フォルクスワーゲン・ゴルフGTI クラブスポーツ45。最新のホットハッチは、ホンダのドライビング体験を超えたのだろうか。このカテゴリーで、有力な選択肢が登場したといえるのか。そんな内容を確かめたい。
3台が走るエリアは、英国南西部のサウス・ウェールズ。まずは、同僚のマット・プライヤーがシビック・タイプRをドライブする。5kgの軽量化のために、インフォテインメント・システムが付いていない。車内で聞こえるのは、クルマの放つノイズだけだ。
もう1人、ベン・サマーレルがドライブするのはBMW 128ti。筆者、リチャード・レーンはゴルフGTI クラブスポーツ45に乗って、3台の比較がスタートした。
昨年、筆者はドイツのアウトバーンで249km/hまで出して、量産化前の128tiを試乗している。パッシブダンパーのサスペンションも試した。英国の平滑ではない路面をいなし、フロントアクスルの機械式トルセンデフが、効果的に仕事をする。