【じっくり見たい】NSXタイプS日本仕様 これでホンダNSXは終わりなのか?

公開 : 2021.08.30 11:42  更新 : 2021.12.13 21:20

ホンダが「NSXタイプS」を日本公開。これで、NSXは終わるのでしょうか。価格は2794万円。開発陣に取材をしてきました。

日本価格が判明 来夏発売

ホンダのスーパーカー、NSXが2022年いっぱいで生産終了することになった。デビューは2016年だから6年間のモデルライフになる。

1990年から2005年まで作られた初代に比べると短いうえに、2世代続けて後継車を迎えないままの終焉になってしまいそうだ。

NSXタイプS(カーボンマットグレーメタリック)
NSXタイプS(カーボンマットグレーメタリック)    前田恵介

ホンダは今年3月、S660も2022年で生産終了とアナウンスしたばかり。昨年はF1からの撤退を発表している。商売にしても趣味にしても、1つのことを長い間続けることが尊ばれる日本では、いい評価はなかなか聞かない。

ただ「本田宗一郎さんが泣いているぞ」というのは勘違いだ。

宗一郎氏が社長だった時代、S500~S600S800が生産されていたのは7年間で、1964年から参戦を始めた第1期F1も4年後に活動に終止符を打った。そういう社風なのだ。

とはいえNSXが重要な車種であったことは間違いなく、ホンダは集大成としてタイプSをリリースした。世界限定350台で、日本には30台が割り当てられ、9月2日から国内での受注を開始し、来年7月に発売予定。価格は2794万円だ。

現行NSXは、3.5L V6ツインターボエンジンと9速DCTの間にモーターを内蔵し、縦置きミドシップマウントしたうえに、フロントにも左右1対のモーターを追加した、3モーターハイブリッドAWDのスーパーカーである。

デビューした頃は、まだ電動化などほとんど話題にならなかったこともあり、モーターやバッテリーの搭載で重くなるハイブリッド化には異論も多かった。

しかし近年、フェラーリ296 GTBマクラーレンアルトゥーラなど、多くのスーパーカーが電動化にトライしている。NSXは時代の一歩先を行っていたと言える。

他社スーパーカーの先導役

聞くところによれば、現行NSXはスーパーカーを手がけるいくつかの自動車メーカーが研究開発用に購入したそうで、影響力の大きさが伺える。たしかに296 GTBもアルトゥーラも、エンジンはV6ツインターボになっている。

そういえば初代も、「こんなに乗りやすいスーパーカーはスーパーカーではない」という否定的な意見があった。しかしその後、欧州のスーパーカーがおしなべて乗りやすくなったことを考えれば、これもまたNSX効果と考えられる。

タイプSのボディサイズは、全長4535×全幅1940×全高1215mm。標準のNSXに比べて全長が長くなっている。
タイプSのボディサイズは、全長4535×全幅1940×全高1215mm。標準のNSXに比べて全長が長くなっている。    前田恵介

そんなNSXの集大成であるタイプSを、発表前の説明会で見ることができた。

会場に置かれていた初代タイプSより、標準車との違いは大きかった。開発責任者の水上聡氏、設計開発責任者の井上雅文氏の言葉を交えてお伝えしよう。

ちなみに現行NSXは米国で開発されたが、2019年のマイナーチェンジから開発の拠点が日本に移っており、タイプSも我が国でプロジェクトが進んだ。初期型はクオリティへの不満が多かったので、熟成を得意とする日本側の担当になったのかもしれない。

コンセプトは「スーパーカーを極める」。トータルパワー、ライトウェイト、エアロダイナミクスの3点にこだわって仕上げられた。

3.5L V6ツインターボエンジンは、ターボチャージャーの過給圧、インジェクターの燃料噴射流量、インタークーラーの放熱量をアップすることで、最高出力はプラス22psの529ps、最大トルクは5.1kg-m向上して61.2kg-mとなった。

フロントのツインモーターユニットも、バッテリー出力と使用可能容量を拡大することで7psのアップを実現。システム最高出力は581psから610ps、システム最大トルクは65.9kg-mから68.0kg-mに引き上げられている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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