【何が起きてる?】半導体不足、自動車産業に甚大な影響 その理由と今後

公開 : 2021.09.02 19:45  更新 : 2021.10.11 13:55

半導体不足に揺れる自動車の工場。いったい何が起きていて、なぜこれほど長引くのでしょう。要因を1つ1つ探ってみました。

“恒例”の供給不足 今回は何が違う?

執筆:Hajime Aida(会田肇)
編集:Tetsu Tokunaga(徳永徹)

半導体のひっ迫が世界中で深刻化している。

影響を受けるのは当初こそPC、スマートフォン(スマホ)、家電といったエレクトロニクス製品など限定的と思われていたが、昨年あたりから自動車産業にも影響が出始め、今や生産そのものを停止する事態にまで影響は及んでいる。

連日報じられる、完成車工場の稼働調整。半導体不足が発生しているワケを探ってみよう。
連日報じられる、完成車工場の稼働調整。半導体不足が発生しているワケを探ってみよう。

これは自動車産業の歴史の中でも初めてのことだ。

実は、半導体がひっ迫すること自体はこれまでも何度もIT業界が経験してきた。

そもそも半導体の需要は一定ではなく、それを予測するのは難しい。半導体はPC・スマホの需要状況に合わせて生産が調整されてきたからだ。しかし、それは言わば、半導体産業がこれまで何度も経験してきた“恒例行事”でもあった。

しかし、今回のひっ迫は今までとは明らかに様相が違っている。

昨年あたりから「半導体が調達できず、自動車の生産ラインがストップしている」という発表や報道が相次いでいるのだ。しかもそれは自動車業界にとどまらず、一般家電などにも影響は広がりそうな勢いだ。

これは一体どうしたことなのか。何が起きているのだろうか。

見誤った新型コロナウイルスの影響

これまで伝えられた報道によれば、7月16日時点で半導体不足による北米の自動車車両の累積減産台数は167万8000台にも上ったという。

VWも、ドイツ国内2工場で8月の夏季休暇期間を1週間延長することを決定した。

「半導体不足も、コロナ禍で起こったマスク不足も根本は同じ」と筆者。急激な需要増に対して、供給が少ない。では、なぜ需給ギャップがいつまでも解消されない?
「半導体不足も、コロナ禍で起こったマスク不足も根本は同じ」と筆者。急激な需要増に対して、供給が少ない。では、なぜ需給ギャップがいつまでも解消されない?

日本の自動車メーカーでは日産が今年3月に北米3工場で生産休止を実施したほか、お盆が明けた8月19日にはトヨタが大規模な生産調整を公表し、20日にはマツダが半導体部品の不足で海外2工場の操業停止を発表。まさに全世界の自動車メーカーが影響を受けている状態なのだ。

その要因としてあるのが、自動車業界の旺盛な半導体需要に生産が追いついていないことだ。

そもそも論で言えば、半導体不足も、コロナ禍で起こったマスク不足も根本は同じ。急激に需要が高まったのに、市場で流通する物量が少ないと発生する。

もともと半導体は自動車だけでなくPC・スマホなど個人需要の端末のほか、基地局など5G関連のインフラ整備が急ピッチで進められていたこともあり、需要は旺盛だった。そこを襲ったのが新型コロナ禍だ。

実は半導体メーカーは、コロナ禍による影響で自動車の生産台数は大きく落ち込むと見ていた。

状況は自動車メーカーも同じで、半導体の注文を各社とも手控えていたのだ。ところが中国の景気回復が予想よりも早く、新車販売も急回復する。

この状況に自動車メーカーは慌てて半導体の発注を行うが、半導体メーカーは巣ごもり需要で注文が増えていたPC・スマホなど“IT系製品シフト”をしており、すぐには対応できない。

そんな矢先、半導体工場の火災が発生する。

記事に関わった人々

  • 徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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