【1000万で選ぶなら】マクラーレン12C BMW M3 CSL 同価格帯の2台を比較 後編

公開 : 2021.09.19 09:45  更新 : 2021.10.15 13:24

近年は同等の価格が付いている、マクラーレン12CとE46型BMW M3 CSL。一体どちらが魅力的な中古車なのか、英国編集部が比較試乗しました。

110kgもダイエットしたM3 CSL

執筆:Ben Barry(ベン・バリー)
撮影:Luc Lacey(リュク・レーシー)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
今日の2台を貸し出してくれたソーニー・モータースポーツ社が誕生するきっかけとなったのが、BMW M3のレーシングカーだった。今でもM3との関係性は濃く、年に数回はCSLのメンテナンスもしているという。

M3 CSLのベースは、E46型のM3。当時はまだ2ドアクーペだった。細部まで大幅に手が加えられ、通常のM3とは異次元のドライビング体験が生まれている。

シルバーのBMW M3 CSLとオレンジのマクラーレン12C(MP4-12C)
シルバーのBMW M3 CSLとオレンジのマクラーレン12C(MP4-12C

専用の19インチ・ホイールのほか、バンパーやカーボンファイバー製ルーフ、ダックテールのトランクリッドなどが目印。軽量化が強く意識され、110kgもダイエットしている。

3.2L直列6気筒エンジンにもチューニングが施され、17psを上乗せ。最高出力は360psに届いた。

専用のバケットシートに身体を収める。マクラーレンより遥かに座面は高く、一般的なモデルがベースなことを思い出させる。座る位置は少し前気味。最初は不自然に感じられるが、すぐに慣れる。

口うるさいドライバーなら、色々と気になる部分がCSLに見えてくるかもしれない。低速域では乗り心地は硬い。少し我慢の必要があるほど。

オートメーテッド・マニュアルのSMGは、変速がかなり手荒い。ゴツゴツと。変速時は、MTのようにアクセルを少し戻すと良い。狭い場所への駐車は避けたい。マクラーレン12Cの後では、ステアリングの反応も緩く感じてしまう。

とはいえ、速度が少し上昇すれば、サスペンションには充分なしなやかさが出てくる。SMGのメカニカルなフィーリングが、CSLのスパルタンな雰囲気とマッチする。M3 CSLは素晴らしい。

白眉のシャシーと中核をなす直列6気筒

シャシー・バランスは白眉。フロントタイヤのグリップ力は高く、反応はシャープ。リアタイヤのトラクションは強大。フロントエンジン・リアドライブという、悪用可能な特性も引き出しやすい。

M3 CSLの中核をなすのが、S54と呼ばれる直列6気筒ユニット。滑らかで静かで、普通に運転している限り荒々しさは感じられない。

BMW M3 CSL(2003年/英国仕様)
BMW M3 CSL(2003年/英国仕様)

CSLの車重は1385kgで、1434kgのマクラーレン12Cより約50kg軽いが、265psと23.4kg-mほど劣る。発生回転域もBMWの方が高い。

しかしアクセルペダルを踏み倒すと、専用のカーボン製エアクリーナーボックスから痛快な吸気音が響き、7900rpmめがけて秘めていた獰猛さが顕になる。オールドスクールなM3にふさわしい体験だ。

クルマの真の能力は、ドライバーがしっかり振り絞ることで引き出せる。すべてを体感したいという、強い想いに駆られてしまう。

ソーンによれば、BMWがこれまで開発してきた中で、E46型はレースカーのシャシーとしてベストだという。当初からレースカーも視野に設計され、ロードカーに展開したためだろう、と話す。

同時にマクラーレンはまったくの別次元だとも、ソーンは認める。シャシー構造やハンドリング、デザイン、パフォーマンス。新車時の価格は、マクラーレンの方が3倍高かっただけの理由はある。

M3 CSLの強みは、ランニングコストの手頃さだ。ソーニー・モータースポーツ社に持ち込めば、BMWなら税別で1時間あたり75ポンド(1万1500円)のサービス費用で見てくれるという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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