【21世紀の英国スポーツ】ジェンセンS-V8とモーガン・エアロ8 V8のロードスター 後編

公開 : 2021.09.25 17:45  更新 : 2021.10.15 13:18

21世紀の幕開けを待っていたかのように登場した、2台の英国スポーツ。V8エンジンを搭載したロードスター、S-V8とエアロ8を、英国編集部がご紹介します。

ソリッドでオールドスクールなスポーツカー

執筆:Simon Charlesworth(サイモン・チャールズワース)
撮影:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
アラン・ロブソンがオーナーの、ジェンセンS-V8。車内は広々としていて、レザーの風合いが良い。快適なドライビングポジションが取れ、ペダル周りにも余裕がある。インテリアを見渡すと、フォード由来の部品が各所に用いられているのがわかる。

大きなクラムシェル・ボンネットの内側には、フォードの4.6L V8エンジンが収まっている。最高出力は329ps/6000rpmで、最大トルクは44.1kg-m/4800rpmもあり、頼もしいユニットだ。

メタリックブルーのジェンセンS-V8とワインレッドのモーガン・エアロ8 シリーズ1
メタリックブルーのジェンセンS-V8とワインレッドのモーガンエアロ8 シリーズ1

いかにもアメリカンなV8ノイズを奏でつつ、3000rpm辺りから威勢が高まる。4000rpmを超えるとサウンドとともに勢いが一気に増す。レスポンシブでマッスル。5速MTはとても滑らかに変速できるが、変速なしでも不足ない加減速を楽しめる。

速度を落とす必要が出てきても、効果的なディスクブレーキが控えている。ステアリングホイールやシートにも、余計な振動は一切伝わってこない。ジェンセンS-V8は、ソリッドだ。

唯一残念な気持ちにさせるのが、TVRのように走行中に振動するボンネットくらい。足元はかなり熱くなる。高速域ではエグゾーストノートが気分を高めるが、風切り音と圧力差が生む低音がうるさい。

しかし、オールドスクールなスポーツカーとして、多少の洗練不足には目をつぶるべきだろう。ジェンセンS-V8の魅力を見逃してしまう。

路面の起伏のいなし方は良好で、ボディロールも適度に抑制できている。感触豊かなステアリングホイールを回せば、フロントノーズは積極的に反応する。

クラシカルな車内にBMWの樹脂部品

カーブの続く区間を攻め込むと、リアタイヤ側の設計が理想には届いていないことを伺わせる。プッシュしすぎるとオーバーステアが顔を出す。でもアナログな挙動で、限界領域は掴みやすく扱いやすい。操ることが楽しい。

ワインレッドのエアロ8は、ヒュー・リーダーが大切にするモーガン。長年の夢を叶えた成果だ。6万4000kmほど走っているが、年中スポーツカーに乗ることを気には留めていないという。19歳で、カニ目のオースチンヒーレー・スプライトを所有したらしい。

メタリックブルーのジェンセンS-V8とワインレッドのモーガン・エアロ8 シリーズ1
メタリックブルーのジェンセンS-V8とワインレッドのモーガン・エアロ8 シリーズ1

小さなドアを開け、エアロ8の車内に身を置く。レザー張りのバケットシートに落ち着くと、グランドツアラーとして、どこかぎこちない。

シートポジションは低く、ドアの上端は高い位置に来る。リアミラーは、折りたたんだフードと空しか見えない。ペダルはフロアヒンジで、ステアリングホイールは、かなり手前に位置している。

ダッシュボードは、アールデコとモダンなデザインや素材のミックス。日本でいう青海波、エンジンターンの模様が切られたアルミパネルに白い盤面のメーターが並び、薄いダッシュボードはウッドで覆われる。

目を凝らさずとも、BMW由来と思しきプラスティック製部品がちらほら。全体的な雰囲気を乱している。とはいえ、モーガンの輝きも充分に眩しい。

ジェンセンの方がステアリングはシャープで、フロントノーズも機敏に反応する。高速域では、テールが少し落ち着きに欠ける。一方のモーガンは違う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・チャールズワース

    Simon Charlesworth

    英国編集部
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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