【古き良き英国の伝統】デイムラー・マジェスティック 英国版クラシック・ガイド 後編

公開 : 2021.10.02 18:25  更新 : 2022.08.08 07:23

独立ブランドのデイムラーとして最後に作られたのが、V8エンジンも選べたマジェスティック。壮観なクラシック・サルーンを、英国編集部がご紹介します。

古き良き、職人によるハンドビルド

執筆:Malcolm Mckay(マルコム・マッケイ)
撮影:James Mann(ジェームズ・マン)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
4.6L V8エンジンを積むマジェスティック・メジャーは、ジャガーのウイリアム・ライオンズ卿がデイムラーを買収してからの8年間、製造が続けられた。古き良き、伝統的な職人によるハンドビルドで。3.8L直6のマジェスティックは、その2年前からだ。

ボックスセクション・シャシーは、1937年のデイムラー・ニューフィフティーンからの進化版。伸縮式ダンパーとアンチロールバーを備え、1960年代でも通用する内容にはなっていた。

デイムラー・マジェスティック/マジェスティック・メジャー(1958〜1968年/英国仕様)
デイムラー・マジェスティック/マジェスティック・メジャー(1958〜1968年/英国仕様)

頻繁なメンテナンスは不可欠だが、エンジンの耐久性は高く、充分なトルクを生み出してくれる。中古のメジャー用V8エンジンも、英国なら2000ポンド(30万円)位で購入できる。

最大の弱点はスチール製のガスケット。現代的な材料で再製造されたガスケットなら、ヘッドの状態が良ければピッタリと密閉してくれる。

トランスミッションは、ボルグワーナー社製のDG250Mと呼ばれるAT。マジェスティック・メジャーのトルクを受け入れるには、少々役不足だった。

メルセデス・ベンツでも同じユニットを用いていたが、フルードクーラーを装備させている。ATの脱着費用は安くないものの、手を加える価値はある。

ジャガーが施したこまめなアップデート

マジェスティック・メジャーの場合、フロントのディスクブレーキとキャリパーは、直列6気筒のマジェスティックより大きい。ダンロップ社製の鋳鉄で、通常のフルードを使用すると腐食しがち。シリコン・フルードを用いた方が良いだろう。

デイムラーを買収したジャガーはマジェスティックの製造を続けながら、こまめにアップデートしている。ほとんどがプラスの内容だった。

デイムラー・マジェスティック/マジェスティック・メジャー(1958〜1968年/英国仕様)
デイムラー・マジェスティック/マジェスティック・メジャー(1958〜1968年/英国仕様)

ラジエターの容量を増やしたり、リア・トレッド拡大のためハブへスペーサーを追加した。エグゾーストの取り回しは、リアアクスルの下側から上側へ再設計されてもいる。

後期型には、オルタネーターとリミテッドスリップ・デフ、パワーステアリングも標準装備されていた。同時に、一部では製造コストの削減も図られている。例えば、内装パネルのウォールナット材はグレードが落とされていた。

購入時に気をつけたいポイント

ボディとインテリア

ヘッドライト周辺やフロントフェンダーの後端が錆びやすい。Aピラーは付け根部分。サイドシルにフロア、ドアの下部、リアフェンダー、荷室のフロア、ボックスセクションのシャシーも錆びるポイント。

ウッドとレザーを完全に仕立て直すなら、かなりの費用が必要。

エンジン

デイムラー・マジェスティック/マジェスティック・メジャー(1958〜1968年/英国仕様)
デイムラー・マジェスティック/マジェスティック・メジャー(1958〜1968年/英国仕様)

直列6気筒とほとんど部品を共有しないV型8気筒ヘミエンジンは、合計2044基作られている。驚くことに、多くの部品はまだ入手可能な状態にある。

ヘッドガスケットの不具合は、V8エンジンで一般的。6気筒でも珍しくはない。新しい部品で改善できる。どちらも手入れが行き届いていれば、エンジン自体の耐久性は高い。

8気筒でも6気筒でも、タイミングチェーンの振動音とベアリングの鳴きに注意。オイル漏れや激しいオイルの消費、クーラントとの混合などが見られないかも確かめたい。

トランスミッション

新車当時は、ボルグワーナー社製の3速ATが唯一の選択肢だった。V8エンジンの場合、フルードクーラーの追加がオススメ。

滑らかな変速と、効果的なキックダウンが正常な動作。フルードに透明度があるかも確かめたい。

ステアリングとサスペンション、ブレーキ

鋳鉄製のブレーキキャリパーは腐食しやすく、固着しがち。シリコン・フルードに交換したい。

車重が重いこともあり、頻繁な手入れは不可欠。パワーステアリングからのフルード漏れや、ジョイント類やブレーキの摩耗、タイヤの残り溝なども確認ポイント。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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