【4ドアクーペGT頂上対決】メルセデスAMG GT 63 S アルピナB8 グランクーペ 前編
公開 : 2021.10.02 09:45 更新 : 2021.10.12 16:23
メルセデスAMG渾身の4ドアクーペ・グランドツアラーGT 63 S。似たフォルムをまとった最新のアルピナB8が戦いを挑みます。勝者はどちらへ。
実用性も備える理想のクルマとは
筆者が、すこぶる速くてエレガントで、ドライバーの充足感が高いモデルを探しているとしよう。特別なクルマを。予算は、どこからか湧いてきた15万ポンド(2280万円)だ。
一括で支払うのも悪くはないが、頭金に1万ポンド(152万円)、毎月2000ポンド(30万円)の分割で契約すると思う。新車でなくても構わない。プレミアムブランドの中古車を検索すれば、ベントレーやフェラーリも選択肢に入ってくる。
しかし1つ条件がある。家族持ちだから、4ドアのボディで充分な大きさの荷室が欲しい。これだけの資金があれば、条件をカバーできる1台と、理想の1台を選ぶことも可能ではある。
でも、本当に息を呑むような体験を望むなら、手持ちの資金をすべて投じて1台に絞った方が良いことは間違いない。それを叶えてくれるのが、ハイパーサルーンと呼ばれるクルマになるだろう。
例えば最新のBMW M5 CS。14万ポンド(2128万円)の英国価格を正当化する内容を持つ。背の高いサルーン過ぎると感じるなら、アウディRS7がある。エキゾチックな雰囲気がお好みなら、マセラティ・クアトロポルテ・トロフェオも悪くない。
どれも能力は高いが、筆者には今ひとつしっくりこない。気がつけば、すこぶる速くて、エレガントな見た目で、ドライバーの充足感の高いモデルという理想は、速くて豪華で、実用的なクルマ、という現実にスライドしている。
本当に欲しかったのはアストン マーティンDB11だったけれど、結局はSUVへサインしていた、ということにもなり得るのが現実だ。
伝説を残してきたアルピナの最新モデル
ところが、グランドツアラーという魂や至福のドライビング体験を、実用性を諦めずに得る方法が現れた。ハイパフォーマンスな4ドアクーペという、新しいチョイスだ。最近になって、新モデルが追加されている。
その実力は、どこまで高いのだろう。今回は英国北部、北ペニン国立公園で直接確かめてみたいと思う。
1台目は最新のアルピナ。1970年代の美しいB7ターボ・クーペや、V12エンジンのBMW 7シリーズ・サルーンをベースとしたB12など、多くの伝説をアルピナは残してきた。そのノウハウが存分に発揮さたのが、新しいB8 グランクーペだ。
ミュンヘンの西、ブーフローを拠点とする小さなブランドは、最新の3シリーズで驚異的な成果を挙げている。BMWのSUVをベースに大きな成功も掴んでいるが、ハイパワーなサルーンに最高のハンドリングを両立させる手法こそ、真骨頂だろう。
最新のB8 グランクーペは、色っぽいルーフラインが特徴。B6 グランクーペに置き換わるモデルとなり、高剛性の構造に後輪操舵やアクティブ・アンチロールバーなどを備え、より甘美な操縦性を期待させる。
アルピナの新しいフラッグシップともいえる。北米が主な市場となるが、英国や日本へも入ってくる。
トランスミッション・トンネルの上には、ブルーのレザーとアルミニウム、カーボンファイバーで構成されるセンターコンソール。そこへ、シリアルナンバーが記されたプレートがあしらわれる。他に類を見ない特別なモデルで、佇まいからして違う。