【4ドアクーペGT頂上対決】メルセデスAMG GT 63 S アルピナB8 グランクーペ 後編

公開 : 2021.10.03 09:45  更新 : 2021.10.12 16:21

メルセデスAMG渾身の4ドア・グランドツアラーGT 63S。4ドアクーペ・ボディをまとった最新のアルピナB8が、戦いを挑みます。勝者はどちらへ。

過去10年間で最高のクルマの1台

執筆:Richard Lane(リチャード・レーン)
撮影:Max Edleston(マックス・エドレストン)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
メルセデスAMG GT 4ドアを普通に運転している限り、複雑なシステムの動作はほとんど感取できない。AMG GT 4ドアは、純粋でシンプルに、フラットな姿勢を保ってコーナーを曲がる。

ボディサイズは大きく、車重は2tを超えるが、ステアリングフィールも素晴らしい。2台を乗り比べると、動力性能という点ではAMGの方が有利。だが、アルピナの強みは別の部分にある。

ブラックのメルセデス・ベンツAMG GT 63 S 4ドアクーペと、ブルーのアルピナB8 グランクーペ
ブラックのメルセデス・ベンツAMG GT 63 S 4ドアクーペと、ブルーのアルピナB8 グランクーペ

AMG GT 4ドアは本当に素晴らしい。運転スタイルを問わずハイペースを保てる。確実なトラクションが推進力を生み出し、コーナーからの鋭い脱出加速時でも落ち着きを乱さない。

より積極的なAMGドライビング・ダイナミクス・プログラムを呼び起こせば、90度くらいまでのカウンターステアの範囲で、テールスライドを楽しめる。サスペンションを緩めれば、高次元でのバランスと落ち着きで、リラックスした移動も許してくれる。

このAMG GT 4ドアの幅広い特性には、常にドライバーの自信が伴う。グランドツアラーを名乗る多くの競合以上に。それでいて、機敏な操縦性も常時保たれている。

AMG GT 4ドアは、好き嫌いが分かれるタイプかもしれない。だが筆者は過去10年間で、最高のクルマの1台だと評価している。過小評価されているのではないだろうか。

性格は少し過剰かもしれない。3000rpm以下からでも暴力的な、全長5mを超えるサルーンだ。

ひけらかさない個性がアルピナの魅力

AMG GT 4ドアには、濃密なグランドツアラーとしてのドライビング環境が備わる。オプションのバケットシートなしでも、ドライバーは低い位置にしっかり座れる。

リアタイヤが、ドライバーの背もたれのすぐ後ろにあるような接地感すらある。GT クーペのように。AMGの魔法だ。

アルピナB8 グランクーペ(英国仕様)
アルピナB8 グランクーペ(英国仕様)

では、AMG GT 4ドアが限りある15万ポンド(2280万円)の予算を投じるべき筆頭といえるだろうか。ほぼ間違いなく、他では得られない充足感に浸れると思うが、即答は難しい。

伍するアルピナのサスペンションは柔軟で、操縦性はニュートラル。快適な走りを享受できるB8 グランクーペの方が、素晴らしい長距離マシンとして機能するはず。

AMG GT 4ドア級の動的性能を備えるパフォーマンス・サルーンはなくもない。だが、アルピナのような質感を備えるモデルはない。

ただし、後輪駆動状態を楽しめるという事実が、AMG GT 4ドアに別次元の喜びをプラスしている。生々しいキャラクターという点でも、濃厚さではAMGが凌駕している。

AMGのV8エンジンは、従来ほどの音響的な興奮を得られないものの、イベント性は凄まじい。アルピナのエンジンもクリミーミーで、回転数が高まるほどに面白味も増す。同時に、多くの場面で少し控えめにも感じられてしまう。

この、ひけらかさないような個性がアルピナの魅力でもある。余剰に感じるような部分は殆どない。シフトアップは穏やかで、パワートレインはAMG GT 4ドアより、あらゆる場面で滑らか。郊外の道でも、市街地でも。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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