【ターボの足まわりを移植】ポルシェ911 カレラGTSへ試乗 480psのライトGT3 前編

公開 : 2021.09.24 08:25  更新 : 2022.08.08 07:24

911へ追加されたGTS。現行の992型で最も甘美なハンドリングではないものの、傑出した能力の高さを英国編集部は高く評価します。

クーペとカブリオレ、タルガから選択可能

執筆:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ポルシェが911へGTSというグレードを設定するのには、実は10年以上のブランクがある。実際にオーナーになれた人以外、そのことに気付く読者は限られると思うけれど。

6代目の997型では911にGTSがあったが、それ以降にもパナメーラカイエンにはGTSと呼ばれるグレードが存在していた。最近のクロスオーバー、マカンと、718ボクスターと718ケイマンにも設定されている。気付きにくいのも当然だ。

ポルシェ911 カレラGTS クーペPDK(992型/欧州仕様)
ポルシェ911 カレラGTS クーペPDK(992型/欧州仕様)

同時に、ポルシェにとって、モデルを共通してGTSが特別なものだということも理解できる。今回は久しぶりの登場となった、911のカレラGTSへの試乗だ。

992型の911 GT3やターボは、登場を心待ちにし高い期待を抱いていた。もちろん、992型へ進化した新しいポルシェ911カレラの登場も。一方でGTSと聞いても、それほど目立たないミドルグレードの911に感じられなくもない。

だが、それは誤解だといえる。ポルシェは従来以上に、明確な目的を持って最新の911 カレラGTSを仕上げている。

ボディスタイルは幅広い。カレラと同じクーペとカブリオレ、タルガから選択できる。駆動方式も四輪駆動と後輪駆動から選べる。トランスミッションは8速デュアルクラッチATのPDKか、7速MTが組める。どちらを選んでも、英国価格は変わらない。

ターボから流用されたサスペンション

これまでの911 GTSは、メカニズム的にはオプションのPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)と呼ばれるスポーツ・サスペンションを組んだ、カレラSと基本的に同等だった。パワーも高められてはいたが。

しかし最新の992型では内容を大幅に進化。サスペンションの仕様は注目に値する。そのぶん、価格も引き上げられてしまったけれど。

ポルシェ911 カレラGTS クーペPDK(992型/欧州仕様)
ポルシェ911 カレラGTS クーペPDK(992型/欧州仕様)

エンジンルームに収まるのは、通常のカレラにも搭載される、3.0L水平対向6気筒ツインターボのアップグレード版。カレラS比で30psパワーアップしており、最大トルクも高められている。

エンジンにはカレラGTS専用チューニングのアクティブ・エグゾーストが組まれ、防音材が大幅に削られた。そのおかげで、車内にはフラット6のサウンドが明確に届くようになっている。

最新のカレラGTSで、最大の特長といえるのがサスペンションまわり。エンジンのようにカレラSの改良版ではなく、ハードウエアは遥かにパワフルなターボから流用している。リアアクスルには、ヘルパー・スプリングが備わる。

車高はカレラS比で10mm低いが、ターボのワイドなフェンダーではなく、全幅はカレラと同じ1852mm。そこへ、ターボ級に大きいフロント20インチ、リア21インチのセンターロック・アルミホイールを履く。

ブレーキは、ターボ・スペックのスチール・ディスクが標準。加えて、ダンパーは4本ともにPASMアダプティブ・ダンパーが奢られる。

ちなみにGTSに標準装備ということは、次のモデルイヤーでは、ターボとターボSにも同じ内容が展開されると予想できる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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