【NA V10のクワトロ】アウディS6(C6) 英国版中古車ガイド アウトバーン・ロケット

公開 : 2021.10.06 08:25  更新 : 2021.10.11 17:46

アツアツのRS6モデルの登場で、やや日陰の立場となったC6世代のS6。NA V10エンジンを積む高性能サルーンの魅力を、英国編集部がご紹介します。

穏やかな見た目のアウトバーン・ロケット

執筆:John Evans(ジョン・エバンス)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
2006年から2011年に作られたC6世代のS6。RS4やRS6の登場で、日の当たる存在とはいえなかった。運転する楽しさや注目度の高さでも、及ばないことは確かだ。

当時は、V型10気筒エンジンを搭載しながらも、アウディ製サルーンとしてA6に溶け込むような存在といえた。しかし、穏やかな見た目のアウトバーン・ロケットを、嫌いだというクルマ好きは少ないはず。メカニズムのトラブルは嫌いだとしても。

アウディS6(C6/2006〜2011年/英国仕様)
アウディS6(C6/2006〜2011年/英国仕様)

新車当時、15年前のS6の英国価格は5万5000ポンドほど。近年では7000ポンド(106万円)前後から出てくる。

見た目はA6と間違えそうだが、前後を確認すれば控えめにS6のエンブレムが付いている。フロントフェンダーには、V10という誇り高い記載もある。

LEDデイタイムライトがフロント両サイドのエアインテークで睨みを利かせ、リアでは4本出しのマフラーが凄みを利かせる。見る人が見ればわかる違いだ。

5.2Lの自然吸気V型10気筒エンジンは、最高出力435psを発生。最大トルクは54.9kg-mを3000rpmから4000rpmで発生し、近年のターボエンジンと比べれば回転域は高めといえる。

クワトロによる四輪駆動で、RS4と同様にトルクの60%はリアタイヤへ伝達。2007年からはトルセンLSDが追加された。

トランスミッションは、パドル付きのティプトロニック6速AT。ブレーキは前後ともにベンチレーテッド・ディスクが組まれ、フロントの直径は385mmもある。

2009年にフェイスリフトを受けるが、2008年にRS6が登場。S6の影は薄くなってしまった。

クワトロによる安全性の高さを称賛

現在の英国の中古車市場では、サルーンよりアバントの方が流通量は多い様子。価格に大きな違いはないようだが、1660Lの荷室を持つアバントの方が実用性では勝る。

AUTOCARでももちろん、C6型のS6へ試乗。V10エンジンが備える能力の可能性を発揮できていない、と感じたようだ。0-100km/h加速5.2秒では、不満だったのかもしれない。乗り心地が硬く、路面の不規則性をすべて知覚させるとも触れられている。

アウディS6 アバント(C6/2006〜2011年/英国仕様)
アウディS6 アバント(C6/2006〜2011年/英国仕様)

中古車を試乗して同様の乗り心地だと思ったのなら、スプリングやサスペンション・ブッシュの状態は良好ということだ。ボディは軽くないが、ブレーキは力強く真っ直ぐに効くのが正解となる。

プラスの面では、クワトロがもたらす安全性の高さを称賛している。19インチのアルミホイールにコーナーで向きを変えるキセノン・ヘッドライト、レザーシート、プライバシー・ガラスなどが標準装備。今でも不足はないだろう。

オプションも多彩で、カーボンファイバー製の内装トリムに20インチ・ホイール、リアブラインド、高音質なサウンドシステムなどが装備できた。とはいえ、中古車を購入する場合は整備記録を優先したい。

インテークマニホールドの不具合や、排気漏が確認ポイント。ダイレクト・インジェクションのFSIで起きがちな、バルブの汚れも気にしたいところ。

多くのS6は、オプションが載っていて状態は良さそうに見える。だが最近の整備内容を確認するまでは、一歩引いて交渉に当たりたいところだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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