【1959年式は残存約250台】モーリス・ミニ・マイナー 評論家が買い取った広報車 後編
公開 : 2021.10.16 17:45
AUTOSPORT誌の自動車ライターが長く大切にしてきた、オリジナル・ミニ。1959年式という最初期の貴重な1台をご紹介します。
新生児の頃に自宅へ戻った時もミニ
貴重な1959年式のモーリス・ミニ・マイナーを所有していたジョン・ボルスター氏は、1970年代に入るとフィアット850クーペを普段の足にした。1980年代に体調を崩すと、ミニは義理の息子、デビッド・ダンネル氏へ引き継がれた。
以降の20年間、981 GFCのナンバーを付けたミニは殆ど走ることもなく、ウェールズにあるダンネルのガレージで保管される。ミニ・コレクターでレストア職人でもある、デイブ・ボズウェル氏が彼を説得し、3番目のオーナーになるまで。
価値あるミニを多数所有するボズウェルは、981 GFCのレストアへ着手。可能な限りオリジナルを目指した。特に意識されたのが、クルマの特長や履歴。当時のプレスカーでもあり、最初期のミニとしてベストな内容を持つ1台でもあった。
見事な修復を経て、現在のオーナーはジョン・パウリー氏だ。1964年式のクーパーS 1071ccもオリジナル状態で所有する、生まれながらのミニファンらしい。
「わたしが生まれて病院から自宅へ戻ってきた時も、1959年の白いモーリス・ミニ。免許を取得し、初めて運転したのもミニです。英国人の多くの家族が、何らかの関係を持っていることも好きな理由の1つですね」
熱狂的なミニ・ファンとして、パウリーは981 GFCと、本来のオリジナルとの相違点を指摘できる知識を持つが、それほど数は多くないという。1959年のミニとして、最高の状態だと間違いなくいえるようだ。
ボルスターが追加したという社外部品もそのまま。それに関する記事と照らし合わせても、食い違う部分はほぼない。
オリジナル・ミニの運転は発見の連続
フロントガラスのウオッシャーは、ガラス瓶が用いられている。冬の寒さで凍結すると割れるため、ほどなくしてプラスティック製に変更された。もちろん、ミニ・ファンにとって、ウィンガード社製のボトルは興奮するアイテムの1つだ。
Aフレーム形状のジャッキや、3本のボルトで固定されたヒーターもマニア垂涎だろう。積極的に運転すると割れてしまうが、リベット打ちされた10インチ・ホイールもレア・アイテムだ。
デラックス仕様のミニとして、ツイン・サンバイザーに灰皿も装備されている。クロームメッキは多めに施してある。
当時のミニは、オースチン仕様とモーリス仕様とで違う工場で製造されていた。素材となった鉄板も、別の工場から手配していたことは興味深い事実だ。モーリスの方が僅かに肉厚な鉄板を用いており、オースチンより耐久性は高いらしい。
1959年式のミニが抱える問題としては、フロアパンの設計が原因で起きる、フロアに溜まる水。ルーフから伸びる雨樋の先に、ドレインホールがなかったのだ。
非常に美しい981 GFCは、イベントにも引っ張りだこ。もちろん、自走で会場へ向かう。「ボルスターが追加したリモートギア・リンクは、良いとは感じません。リアガラスのブロワーもイマイチ。珍しいですが」
筆者はモーリス・ミニ・マイナーに接する機会がこれまで多くなく、運転は発見の連続だった。現代のクルマとくらべて、驚くほど小さいということ以外にも。