【手頃なEVを4年後に】フォルクスワーゲンID.ライフ・コンセプトへ試乗 ID.2の前触れ 前編

公開 : 2021.10.11 08:25  更新 : 2021.10.12 15:58

VWが推し進める純EV、ID.シリーズ。今後4年以内に量産されるという、廉価版モデルのコンセプトカーを、英国編集部が一足先に試乗しました。

手頃な価格で環境負荷ゼロのモビリティ

執筆:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
1台のコンセプトカーを完成させるには、数100万ドル(数億円)規模の費用が必要になる。そんなクルマを運転させてもらえる機会は非常に限られ、とても貴重な体験となる。

フォルクスワーゲンID.ライフ・コンセプトは、2021年のミュンヘン・モーターショーで発表された。そんな1台限りのコンプとカーを、ヴォルフスブルク・テストコースで運転させてくれるという。その提案を聞いて、意気揚々とドイツへ向かった。

フォルクスワーゲンID.ライフ・コンセプト
フォルクスワーゲンID.ライフ・コンセプト

新しい純EVクロスオーバー・コンセプトが目的とすることは、手頃な価格での、環境負荷ゼロによる個人モビリティを指し示すこと。オリジナルのビートルが、内燃エンジンの自家用車への門戸を手頃な価格で開いた、80年前をなぞるように。

ID.ライフの量産版は、2025年に2万ユーロ以下(260万円)の価格で発売される計画。5シーターで、セアトなど、フォルクスワーゲン・グループの他ブランドからも兄弟モデルが誕生するだろう。

スペイン・マルトレルにあるグループ内の工場で、新しいフォルクスワーゲン・モデルの生産準備が始まっているそうだ。EUからの大規模な補助金を受け、年間50万台の電気自動車の量産に対応できる施設が完成しつつある。

ID.ライフの量産版は、ID.2と呼ばれる見込み。ID.3より小柄なボディで、内燃エンジンで走るTクロスに相当するモデルとなる。さらにコンパクトなID.1の噂も聞こえてくる。登場すれば、e−Up!を置き換えるモデルとしてショールームに並ぶだろう。

生産方法も持続可能性を意識

当初の計画では、新しい純EVクロスオーバーの発売は2027年が予定されていた。だが、欧州市場では想定より早く電気自動車がユーザーへ受け入れられており、2年前倒しで計画が進められている。

恐らく、ID.2は成功するだろう。量産版を公道で運転できるまでに4年も待つ必要があるが、その前触れとなるID.ライフのステアリングホイールを握れて、とてもうれしい。何しろ、世界に1台しか存在しないクルマだ。

フォルクスワーゲンID.ライフ・コンセプト
フォルクスワーゲンID.ライフ・コンセプト

ID.ライフのデザインで目指されたことは、小さなID.3を描き、クロスオーバー風に仕上げることではなかった。フォルクスワーゲンによれば、時間を感じさせないデザインの確立を狙ったという。大胆な変更なしに、将来の量産車へ展開できるものとして。

量産版のID.2を一足先にイメージできるだけでなく、持続可能性を意識した生産方法も、具体的に提案されている。クリアコート塗料の着色剤には、天然の木材チップを利用。開閉できるルーフは、リサイクルPETで作られているという。

ID.ライフのスタイリングは、フォルクスワーゲンのID.3やID.4といった既存モデルとほとんど共通性がない。コンパクトなボディに最大の実用性を与えるため、ボクシーなプロポーションをまとっていることも特徴だ。

全長は4091mm、全幅が1845mm、全高が1599mmで、全長の割に背が高くワイド。Tクロスと比較すると、144mmも短く、46mm広く、15mm高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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