【なぜ?】ノート・クロスオーバー登場 日産がまたも「ノート」に頼ったワケ

公開 : 2021.10.09 05:45  更新 : 2021.10.22 10:06

日産ノート・オーテック・クロスオーバー登場。エースの「ノート」で今度はコンパクトSUV市場へ挑む背景を解説します。

SUV キックスだけでは戦力不足

執筆:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
編集:Taro Ueno(上野太朗)

ノートがSUV風のオーテッククロスオーバーを設定した。

この背景には3つの理由がある。

日産ノート・オーテック・クロスオーバー
日産ノート・オーテック・クロスオーバー    日産

まずはこの数年間で、SUVの人気が急上昇したことだ。

15年ほど前までは、国内の小型/普通乗用車の新車販売台数に占めるSUVの割合が10%以下だった。それが現在は25%前後まで上昇している。

SUVの中でもとくに高い人気を得ているのはコンパクトな車種だ。

トヨタヤリス・クロス、ホンダヴェゼル、トヨタ・ライズなど、1.5L以下のエンジンを搭載するSUVの販売が急増している。

日産もコンパクトSUVとしてキックスを用意するが、2021年上半期(4月から9月)の登録台数は、1か月平均にすると約2500台だ。

中堅水準だが、ヴェゼルの4900台、ヤリス・クロス(ヤリスとGRヤリスを除く)の9000台に比べると大幅に少ない。

そこで日産としては、コンパクトSUVの戦力を強化する必要があり、ノート・オーテック・クロスオーバーを開発した。

なぜ「ノート」ベースで登場?

ノート・オーテック・クロスオーバーが開発された2つ目の理由は、SUVの多様性だ。

新型車を開発する場合、通常ではボディを新たにつくる必要がある。例えばノートのクーペやセダンを開発するには、大幅な設計変更が求められる。

日産ノート・オーテック・クロスオーバー
日産ノート・オーテック・クロスオーバー    日産

ところがSUVのカテゴリーになると、いろいろなクルマづくりが可能だ。

キックスのような4WDを用意しないシティ派から、ランドクルーザージムニーのような悪路向けの車種まで、SUVの性格は多岐にわたる。

そしてメーカーにとってとくにメリットが大きいのは、既存の車種をベースに、最小限度の変更でSUVを開発できることだ。

最も分かりやすい車種として、レガシィ・アウトバックがある。

1995年に2代目レガシィ・ツーリングワゴンをベースに、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)を200mmに高めて、ワイドなフェンダーなどを装着した。

日本ではレガシィ・グランドワゴンの名称で販売されて、ヒット作になっている。

今はレガシィ・ツーリングワゴンが廃止され、レガシィ・アウトバックは独立した車種になったが、コンパクトSUVのXVはインプレッサスポーツをベースに開発されている。

外装パーツを加えて最低地上高を200mmに高めただけで、販売は堅調だ。

1か月平均で約1500台が登録され、インプレッサ(スポーツ+G4)の1100台を上まわる。

昨今の自動車メーカーは、電動化を始めとする環境技術、自動運転や安全装備に対する投資が大幅に増えた。

車両の開発費用は縮小を迫られ、日産も既存のノートを有効活用できるノート・オーテック・クロスオーバーを開発した。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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