【合計1600馬力の豪腕対決】シボレー・カマロZL1xサットン・マスタング 前編
公開 : 2021.10.30 09:45
アメリカ車と聞いて思い浮かべる代表例といえば、マッスルカー。高度にチューニングを受けた最新モデルを、英国編集部が比較しました。
ハイパワーなマッスルカーへの憧れ
筆者は他人を羨むことは殆どないが、写真家の友人がアメリカへ引っ越しした時は少し違った。カリフォルニアの広大な風景や、心地よさそうな日差しの中でクラシックカーをいじっている写真が送られてくるたび、自分も、と思わずにはいられなかった。
ジープ・ラングラーのチーフデザイナーを務めた人物は、ミシガン州の冬ならピックアップ・トラックの後ろにスノーモービルを載せ、数100kmも放浪できると話していた。そんな体験も悪くはない。
安くない医療費や銃で撃たれるリスク、毎日のように口にするジャンクフードは好きになれないだろう。しかし、アメリカへの憧れがあることは認めざるを得ない。
ハイパワーなマッスルカーも、そんな対象の1つ。実際、多くの英国人がこれまで派手にモディファイし、その欲求を満たしてきた。経済や環境問題など逆境が襲っても、気持ちが冷めることはないようだ。
英国でデトロイト生まれの筋力自慢を購入することは、北米ほど簡単でもないし、人気があるわけでもない。しかし高性能なパーツを買い集めて、馴染みのチューニング・ガレージへ持ち込み、V8エンジンを800馬力近くまで高めた人物がいる。
ドイツ製のエグゼクティブ・サルーンと同じくらいの金額で、スーパーカー級のパワーが手に入ったようだ。あるいは、部品を探し回るのが面倒なら、仕上がった状態のコンプリートカーを手に入れることもできる。
859psと91.7kg-mを繰り出すマスタング
例えばロンドン北部のクライブ・サットン社を訪ねれば、お眼鏡にかなう1台が見つかるかもしれない。長年アメリカ車を輸入販売してきた経験を持ち、通常のマスタングを費用に応じてワイルドに仕立ててもくれる。
そんなクルマが、今回試乗するサットン CS 850GT マスタングだ。これまでもサットンのマスタングを試乗たことはあるが、数年前はまだ811psだった。それで充分じゃないかって? 確かにそうかもしれない。
だが、今回のマスタングはその上を行く。最高出力859psと最大トルク91.7kg-mを繰り出すという。担当者の話では、英国で売られているマスタングとしては、最もパワフルだそうだ。
フォード自身もシェルビーGT500というチューニング・マスタングを提供している。そちらの最高出力は770psで、CS 850GTには及ばない。左ハンドル車で、英国では乗りにくい。
最新のサットン・マスタングで真っ先に触れるべきは、その大パワーを発揮するエンジン。5.0LのV8ガソリンにホイップル社製のスーパーチャージャーと巨大なインタークーラーをドッキングしてある。
Xフォース社製のアクティブバルブ付きエグゾースト・システムが組まれ、サウンドもドラマチック。それらの効果を最大限に発揮できるよう、エンジンのマネージメント系にも手が加えられた。
サットンがチューニングを施したCS 850GTの英国価格は、いくつかのオプションを載せて11万5000ポンド(1782万円)。真新しい、パンプアップしたアメリカン・マッスルカーを入手できる、手っ取り早い手段といえる。