【4心臓の見事な調律】フェラーリSF90 ストラダーレへ試乗 1000psのPHEV 前編
公開 : 2021.10.25 08:25 更新 : 2021.10.26 15:15
過去最もエクストリームな公道用フェラーリが、英国へ上陸。英国編集部が1000psのトリプルモーターPHEVを一般道で解き放った印象とは。
悪魔的に速い1000psのPHEV
この最新のフェラーリを1か月運転して慣れたとしても、右足で踏むペダルを、一般道でフロアまで倒せる機会は訪れないかもしれない。少なくとも英国では。
SE90 ストラダーレには触れるべき点が多い。ミドシップのフェラーリとして初の四輪駆動だし、真っ当なプラグイン・ハイブリッド(PHEV)・システムも搭載している。そして何より、最高出力は4桁の1000psを達成している。
そんな桁違いの馬力をすべて開放せずとも、SF90はとてつもなく速い。悪魔的に。AUTOCAR好例の詳細テストも追ってご紹介できる予定で、英国のテストコース、MIRAでのタイムや中間加速などを確認すれば、衝撃的な速さを実感していただけると思う。
まずは一足先に、英国のストラダーレ、一般道で走らせた印象をお伝えしたい。
SE90 ストラダーレは非常に複雑なクルマでもある。それ故に値段も高い。英国価格は37万5000ポンド(5812万円)から。クーペもスパイダーも限定生産ではないが、価格はラ・フェラーリ級といっていい。
製造は、F8 トリブートや812 スーパーファストと同じラインで行われるという。手間のかかるコンポジット・タブ構造を採用しないことが、その理由だそうだ。
今回試乗したSF90はさらに高価で、約4万ポンド(620万円)もするアセット・フィオラーノ・パッケージが組まれていた。F1マシンのサプライヤーでもあるマルチマティック社製の固定レート・ダンパーと、チタン製スプリングが装備されるサーキット仕様だ。
24km走れるEVモードはフロントモーターで
通常のSF90ならマルチモード・ダンパーが組まれ、ドライバーに優しいバンピー・モードも選択できる。だが、この試乗車では選べない。
チタン製エグゾーストに、カーボン製のドアパネルも付いてくる。これでも不足を感じるドライバーのために、好戦的なリアスポイラーで武装もされる。巨大なガーニーフラップが生む力で、気流を確実に制御することができる。
とはいえ、SF90で最も関心が集まるのはPHEVのパワートレインだろう。エンジンは8000rpmまで回るF8 トリブートの4.0L V8をベースに、2基のターボチャージャーを低い位置に結合。燃料インジェクションを改良するなど、チューニングしてある。
このV8エンジンとデュアルクラッチATとの間には、1基の駆動用電気モーターが配されている。厚み72mmしかないという、アキシャルフラックスと呼ばれるタイプのモーターだ。
さらにフロントアクスルには、円柱形の駆動用モーターが2基載っている。左右の前輪を、それぞれ受け持つために。
SF90を穏やかに運転する際、ささやくように静かな発進を賄っているのが、フロントの駆動用モーター。EVモードでの走行可能距離は24kmと短いものの、広くない市街地なら、普段は極めて騒々しいクルマでありながら礼儀正しいマナーも得られる。
難しい話はこのくらいにして、運転してみよう。乗り味は、現代的なミドシップ・フェラーリのものに似通っていた。先進的な側面が加わっているけれど。