マセラティ・ビトゥルボ 英国版中古車ガイド 世界初のV6ツインターボ
公開 : 2021.11.22 08:25
高い理想を掲げ、少なくない問題とともに生まれたビトゥルボ。英国編集部が中古車の魅力と注意点をご紹介します。
BMW 3シリーズのライバル
マセラティの救世主として2013年に誕生した、現行のギブリ。年間5万台の販売を目標に据えた、BMW 5シリーズのライバルだ。しかし高いランニングコストと競合には及ばない動力性能で、マセラティの狙い通りにはなっていない。
トライデントの紋所としては、初めてのことではなかった。1981年、マセラティはBMW 3シリーズのライバルとして、ビトゥルボを発売した。ギブリと同じ熱意を持って。だが、製造品質や信頼性の低さから、台数を伸ばすことはできなかった。
ビトゥルボの主力となったクーペは、1990年まで生産された。ソフトトップのスパイダーは、1994年まで生産が続けられた。それでも、英国で売れたビトゥルボの台数は、700台ほどに留まっている。
生産終了から30年ほど経つビトゥルボだが、クラシックカーとして優しく受け入れてくれない人も、英国にはいるようだ。フェラーリを得意とするガレージを経営する、カール・ヴェルド氏は次のように述べている。
「ひどいクルマでしたね。デザインも設計も、フィーリングも。真新しいビトゥルボをサーキットで走らせた友人は、コーナーの度にスピンしていましたよ」
だが、すべての人が辛口な言葉を寄せるわけではない。英国の中古車市場に目を向けると、美点を感じるオーナーによって大切に乗られてきたビトゥルボが、手頃な価格で売りに出ている。
世界初のツインターボエンジン
クラシックカーは全般的に値上がり傾向で、マセラティも例外ではない。数年前なら8000ポンド前後でビトゥルボを手に入れることができた。最高の例でも、1万2000ポンドほどが相場だった。
現在では、そこそこの状態でも1万2000ポンド(約186万円)がスタートライン。高い値段が付いているビトゥルボでも、状態が疑わしい例もある。徹底的にチェックしてから購入したい。
マセラティ・ビトゥルボは、1981年に左ハンドル車のみで発売された。V6のキャブレター・エンジンに世界初のツインターボを搭載した、ハンサムな2ドアクーペだった。
トランスミッションは当初は5速MTと3速ATをラインナップ。MTでは、1速が横に飛び出たドッグレッグと呼ばれるゲートパターンを持つ。
1984年に4ドアサルーンと、ソフトトップのスパイダーが追加。興味深いのが、クーペよりスパイダーの方がホイールベースが短いこと。ボディ剛性は下がるものの、クーペより機敏に走ることが目指されていた。
1986年に、右ハンドルのクーペとスパイダーが英国へ上陸。2.5LのV6エンジンは195psを発揮し、悪くない速さを誇った。
モデル中期のフェイスリフトを経て、1987年に燃料インジェクションを採用。2.5L V6エンジンは24psのパワーアップを達成する。同時期に2.8LのV6エンジンも追加され、こちらは250psを発揮した。
進化を重ねたビトゥルボだが、より安く乗りやすいBMW 3シリーズからの買い替えを促すには充分ではなかった。しかし今なら、状態の良い例を探せば、貴兄の潤沢な財産をすべて失うまでには至らないだろう。